日本人が意外と知らない…「日本サッカー協会のシンボル」に「3本足のカラス=八咫烏」が採用されている「驚くべき理由」
神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇……。私たち日本人は、「戦前の日本」を知る上で重要なこれらの言葉を、どこまで理解できているでしょうか? 【写真】日本サッカー協会のシンボルに「3本足のカラス=八咫烏」が採用された理由 右派は「美しい国」だと誇り、左派は「暗黒の時代」として恐れる。さまざまな見方がされる「戦前日本」の本当の姿を理解することは、日本人に必須の教養と言えます。 歴史研究者・辻田真佐憲氏が、「戦前とは何だったのか?」をわかりやすく解説します。 ※本記事は辻田真佐憲『「戦前」の正体』(講談社現代新書、2023年)から抜粋・編集したものです。
二羽の霊鳥──金鵄と八咫烏
神武天皇と軍事では、金鵄(きんし)勲章の存在も外せない。 金鵄勲章は、戦争で武功抜群とされた軍人軍属に与えられた勲章である。1890(明治23)年に定められ、功1級から功7級までの等級に分かれ、1894(明治27)年からは終身年金も付与された。金鵄勲章は日本の軍人にとって、もっとも名誉ある勲章のひとつだった。 ここでいう金鵄ということばも、神武天皇に由来する。神武天皇が奈良盆地で宿敵のナガスネヒコと戦っていたとき、金色のトビが舞い降りて、天皇の弓の先に止まって輝き、相手側を目眩ましした。その隙をついたことで、天皇の軍勢は勝つことができた。この故事から、勲章の名前に採用されたのだ。 勲章創設の詔勅にもこう記されている。 朕惟(おもん)みるに神武天皇皇業を恢弘し、継承して朕に及べり。今や夐(はる)かに登極紀元を算すれば二千五百五十年に達せり。朕此期に際し天皇戡定(かんてい)の故事に徴し、金鵄勲章を創設し、将来武功抜群の者に授与し、永く天皇の威烈を光(あきらか)にし、以て其忠勇を奨励せんとす。 さきほども述べたとおり、橿原神宮が創建され、大日本帝国憲法が施行された1890(明治23)年は、皇紀2550年にあたる。ここでもそのことが明記されている。 中世をキャンセルすることで、神武天皇が率いた古代の軍隊と、現在の日本軍を結び付ける。軍人勅諭とまったく同じロジックである。