腸内細菌研究の内藤裕二・京都府立医科大教授が杉田玄白賞を受賞 現代の「腸活」に通じる江戸時代の「医食同源」
腸内細菌や腸活の研究が専門の京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授(生体免疫栄養学)が2024年度の杉田玄白賞(主催・福井県小浜市)を受賞し、昨年12月、小浜市内で表彰された。
オランダの医学書「ターヘル・アナトミア」を翻訳し、「解体新書」を出版したことで知られる杉田玄白は小浜藩医だった。 小浜市によると、杉田玄白が晩年に書き残した養生訓「養生七不可(ようじょうしちふか)」からは「医食同源」の理念が読み取れることから、2002年度から「食」に関する進歩的な取り組みや研究の実績がある人物に杉田玄白賞を授与しているという。 【杉田玄白の「養生七不可」】 ①昨日の失敗を悔やまない ②明日のことは過度に心配しない ③食べすぎ、飲みすぎに注意する ④風変わりなものは食べない ⑤何事もない時は薬を飲まない ⑥元気だからといって無理をしない ⑦楽をせず、適度に運動をする 23回目を迎えた2024年度の杉田玄白賞は、「食の栄養素が腸内細菌や腸内環境に影響を与え、免疫や代謝、腸以外の臓器の機能を制御することを明らかにし、『パーソナルヘルスレコード(PHR)』に応用した健康長寿戦略を推進した」として、計13件の応募の中から、内藤さんに贈られた。 ※パーソナルヘルスレコード=一元管理された個人の健康や医療の情報、個人の健康記録のこと 内藤さんは、野菜や果物に含まれる「カロテノイド」や、高発酵性食物繊維、乳酸菌・ビフィズス菌が腸内細菌に与える影響、日本人に合った腸内細菌叢の分類について研究を進めてきた。その成果の一部はすでに食品や検査キットとして、社会で活用されている。 また日本屈指の長寿地域として知られる京都府の京丹後地域について、住民の長寿の要因を解明するため、高齢者に寄り添いながら住民の健康状態や食生活などを長期間追跡する研究も2017年から続けている。 今回の受賞について、内藤さんは「例えば、養生七不可にある『昨日の失敗を悔やまない』は、腸脳相関(腸と脳が互いに情報を伝達しあい、作用しあうこと)の話につながるし、『元気だからといって無理をしない』は、体内時計の話に通じる。養生七不可には、食べ物や薬、運動のことも書かれていてる。まさに私が大事だと考え、研究し、講演などでも伝えてきたことは養生七不可に通じている。小浜市にある県立若狭高校の卒業生という縁もあるので、受賞でき大変うれしい」と話している。 ◇ 内藤 裕二(ないとう・ゆうじ)京都府立医科大学大学院教授(生体免疫栄養学) 1983年京都府立医科大学卒業、2001年米国ルイジアナ州立大学医学部客員教授、09年京都府立医科大学(消化器内科学)准教授などを経て21年から現職。日本酸化ストレス学会副理事長、日本消化器免疫学会理事、日本抗加齢医学会理事、2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会アドバイザー。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢学、腸内細菌叢。著書に「消化管(おなか)は泣いています」「人生を変える賢い腸のつくり方」など多数。