歴史的イノベーターに学ぶ、アトツギxスタートアップ新時代のこれから
「尾州ウール」と呼ばれる、世界でもその名が知られる毛織物を130年以上にわたって手掛けてきた三星グループ。代表を務める岩田真吾は、アトツギ(老舗企業)とスタートアップの共創コミュニティ「アトツギ×スタートアップ共創基地TAKIBI&Co.(以下、タキビコ)」を立ち上げて1年が経った。 同社の5代目であり、中部エリアのスモール・ジャイアンツ イノベーターでもある岩田が、タキビコ1周年記念イベントで、自身がファンと公言するCOTEN CEOの深井龍之介を迎えてトークセッションを行った。その模様を紹介しよう。 ■歴史的に注目すべき分野は「教育・福祉・土木・軍事」 岩田:ズバリ、今アトツギとスタートアップ双方が注目すべき分野は? 深井:国が行ってきた仕事です。国民国家は昔から、大きく4つの役割を担ってきました。それが「教育・福祉・土木・軍事」です。今、国民国家の力がかなり弱くなり、福祉や医療分野では、今後これまで国ができていたサービスができなくなる。人口が減るのに高齢者の割合が増えるからです。土木系のインフラも同じです。能登半島地震の復興もなかなか進んでいません。教育もまた然り。今まで小学校に通わせたくないという人はいなかったと思うのですが、公教育を受けさせたくないという人が、特に富裕層を中心に増えています。 歴史的に見て、ある主勢力が今まで提供してきたサービスが提供できなくなるフェーズになると、新しい勢力が必ず出てくる。これまで税金の再分配で行われてきた仕事が、今後は市場経済上で行うようになるということです。 岩田:これまでは儲からないから国がやる分野だと思っていたことが、長い目で見るとチャンスだということですね。 深井:チャンスですし、優秀な人材が流れるということです。これからは人材の時代です。ヒト、モノ、カネの中で圧倒的に重要なのはヒトです。新規事業にしても、相手に信頼してもらえる能力を持った人材の有無が肝になる。こうした人材を獲得するための競争の時代に突入します。ここで有利となるのが国家の仕事に参入していく人たちです。これは歴史から見ても、再現性が高い現象です。 テスラの目的は電気自動車の普及ではなく、環境問題に対するアンチテーゼで、これはそもそも国家戦略としてやるべきことです。ハイパーリンクも宇宙事業も同様です。物流に関しても、ドローンで荷物を運ぶことは、地方においてはもはやインフラで、買い物ができるという人権を担保する、まさしく国家事業です。 しかし、各国で税金を収めない人が増えていることが問題になっています。新勢力が出てくる時の挙動と同じです。Amazonプライムの料金は新しい形の税金で、国に払わずにAmazonに払った方がサービスが良いとなるわけです。 明らかに国家が後退していくフェーズに入っていますから、民間が参入してくる。それがいわゆるソーシャルベンチャーです。歴史的に見ると、イングランドのヘンリーVIII世です。彼らがキリスト教会から権力を奪う時は、まさにこのような動きが顕著でした。