歴史的イノベーターに学ぶ、アトツギxスタートアップ新時代のこれから
ポスト資本主義のキーワードは「ダブルスタンダード」
岩田:この先、グローバルに展開しないと事業は成立しませんよね。となると、国によってやり方を変えなければいけないということですか? 深井:そうですね。その土地の特性や文化を理解した上で、現地の人たちが慣れているマネジメント方法を採用しなければならない。海外のメーカーが日本と同じように『カイゼン』はできません。日本人がシリコンバレーを踏襲できないのと同じです。 また欧米社会では、指示はトップダウンで、しかも言語で伝えることを徹底しています。一方、日本では言語よりも身体知を大切にするので、感覚理解や体感というものが優位です。自分が習得したスキルやマインドを言語化すると棄損すると考えるのが日本人で、言っても伝わらないことを共有するのが仲間だという考えを持っています。 もうひとつ日本人の特徴として、仲間とみなした人たちに対する理解度が異常に高い。仲間とみなす人には、自発的、主体的に動く一方で、仲間だと思っていない人に対しては一切行動しない。マネジメント方法としては、仲間の範囲を広げていけば、自発的に皆が動いて、よりよい組織になるということです。 岩田:今までは社外にノウハウや知見を共有することはあり得ないことでしたが、最近はタキビコのようなコミュニティやカンファレンスなどで共有しようという流れになっています。 深井:前提条件としてフロンティアがなくなっているので、共創する方が生き残る可能性が高くなる、というのは私が歴史を見てきてわかったことです。 ■ポスト資本主義のキーワードは「ダブルスタンダード」 岩田:アトツギという視点から、歴史上でイノベーターのような活躍をしてきた人物は、先代がかなり地ならししていたから成功したケースが多いような気がしているのですが。 深井:信長、秀吉、家康は、彼らが採ったそれぞれの戦略は、あの時代、あの場に生まれたらそうするしかなかったものです。私たちもみな同じです。どこに生まれるかは自分で選べません。個人の強みは生まれた環境の中からしか絶対に出てきません。これは、さきほどの日本人に生まれたらシリコンバレーでは真似できないことと同じです。 私は、日本におけるアトツギ企業の大いなる可能性を感じています。アトツギは、長期目線を持っているからです。特に上場企業は、目の前の利益を出さなければならない宿命を背負っているのに、長期目線でも考えている。一見すると矛盾しているようですが、この矛盾を抱えているからこそ長く続いてきたのです。 私はCOTENを儲けようと思ってやっているわけではありませんが、もし私が儲けて、あちこちに別荘を立てたとしても創業者なので誰にも何も言われません。対して、アトツギが先代のやっていないことをやれば、色々問題が起こりますよね。そこには系譜があるからです。系譜があることで、矛盾が起こる。実はこれが逆に強みなんです。