訪日外国人にとってアルファードは豪華だけど狭い! インバウンドが望む「メルセデス・ベンツ スプリンター」とは?
海外ではメルセデス・ベンツの商用車がシャトルバスに
2024年3月末から4月上旬にかけて開催された、「第45回バンコク国際モーターショー」の会場内でメルセデス・ベンツブースを訪れたときのこと。BEV(バッテリー電気自動車)となるEQシリーズなど、魅力的なモデルが展示されているなか、今回は新型Eクラスが目玉として展示されていた。さらに、ブース内を歩いているとメルセデス・ベンツのLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)となる、「スプリンター」が置いてあった。セダンやクーペ、SUVに混じり、背の高い大きな商用車であるスプリンターはかなり目立っていた。 【画像】メルセデス・ベンツ・スプリンターのそのほかの画像を見る(9枚) 展示されていたスプリンターは、日本でいうところの「マイクロバス」のように架装されていた。ここ最近、メルセデス・ベンツブースではスプリンターの展示が目立っていた。東南アジア全体で見ても、メルセデス・ベンツはスプリンターの販売促進を強化しているように見えるので、その流れなのかなと考えている。 ネットで「MERCEDES-BENZ SPRINTER THAILAND」と検索すると、空港と宿泊ホテル間の送迎サービスのウェブサイトが多く出てくる。筆者は写真のような豪華仕様ではないものの、アメリカの空港近くにあるモーテルから空港までの送迎で、スプリンターバンに座席を設けただけのような「シャトルバス」に乗ったことがある。 じつはスプリンターは商用車ながら、ゴージャス度には差はあるものの、送迎などの「バスニーズ」も多いのである。
豪華で広いクルマが日本には足りない
「コロナ禍前超え」などともいわれる勢いで増え続けているのが、日本を訪れるインバウンド(訪日外国人観光客)。円安に歯止めがきかないなか、ハイパーインフレに悩む欧米などから見ればはるかに安い物価も手伝って、インバウンドは増え続けている。そんななか、とくに富裕層の間で不満にもなっているのが、日本ではメルセデス・ベンツ・スプリンターがほぼ存在しないこと。 日本で富裕層の空港送迎や貸切車両として定番なのはトヨタ・アルファード。欧米人にはあまりピンとこないかもしれないが、アジア圏から訪日したインバウンドから見たら、自国でもVIPが愛用する高級ミニバンという認識があるので人気も高い。 しかし、3列目までフルに乗車してしまうと荷物がそれほど積めないのがアルファードの難点となっている。日本国内の滞在日数が2週間や1カ月、それ以上の長期間となると、手荷物もひとつひとつが大きく数量も多い。そのため、たとえばホテルまで人を送る車両のほかに、荷物運搬専用のデリバリーサービスというビジネスが存在すると聞いたことがある。 コロナ禍に入ってから、インバウンドが再び日本を訪れるようになると、最大で60人ぐらい乗ることができる大型貸切バスを10人程度のインバウンドがドル換算で2000ドル(約31万円)で1日貸し切る「2000ドルバス」という需要が目立っている。ちなみに傾向として大型貸切バスもインバウンドの満足感を高める意味もあり、座席間のクリアランス拡大のために座席数を減らす傾向も目立っている。母国で1日大型バスを貸し切ると4000ドル(約62万円)ほどかかる。日本ではそれが2000ドルで1日借りることができるということで人気が高いようである。 使い方は、東京から富士山へ遊びに行くというような方法がある一方で、ホテルの駐車場に待機させておき、「銀座へ寿司を食べに行きたい」などと、出かける用事ができるたびに近距離利用するなどいろいろあるようだ。 彼らにしてみれば、格安で大型バスを貸し切れるので、たとえばデパートで「爆買い」しても、荷物を載せる場所に困らないということも貸し切る理由にあるようだ。帰国のため空港へ向かうときのことを考えても、遠慮なく荷物を増やすことができるので重宝されているようである。 ちなみに中型バスという選択肢もあるが、現状では中古車市場では在庫車がいつもないというほど人気が高く、絶対数が足りないので、業者が持つ車両は大型貸切バスとなっているのである。 そのような富裕インバウンドが異口同音に、「メルセデス・ベンツ・スプリンターはないのか」というのである。人だけではなく荷物もたくさん載せることができ、内装も凝っているメルセデス・ベンツ・スプリンターが富裕インバウンドのベストチョイスなのだが、残念ながら日本ではほとんど存在していない。そのため、トヨタ・コースターなどのマイクロバスを改造して乗車定員を10名ほどにして豪華仕様に架装した車両を運行するケースも多いようだ。 とくに日本へ来て多くのお金を落としている富裕インバウンド層は、「満足できるサービスを提供してくれるのは外資系五つ星ホテルだけ」とも語る。日本における富裕インバウンド層への「おもてなし」はまだまだ十分ではないようであるが、さまざまな工夫を凝らして満足してもらおうとするのが、日本流のおもてなしとなっているのかもしれない。
小林敦志