エネルギー基本計画、原発依存度「低減」を見直しへ…電力需要増に対応し「最大限活用」明記
政府が3年ぶりに改定する「エネルギー基本計画」の概要がわかった。東日本大震災以降、原子力発電について「可能な限り依存度を低減する」としていた方針を見直し、「最大限活用する」と明記する。建て替えの条件も緩和する。電力需要増への対応に加え、脱炭素化と安定供給のために原発を活用する方針を明確にする。 【図表】ドイツはなぜ、原子力なしで済むのか
来週にも開かれる経済産業省の「総合資源エネルギー調査会」の分科会で基本計画の素案を示し、2025年3月までの閣議決定を目指す。
40年度の電源構成目標も初めて示し、再生可能エネルギーを4~5割、原子力を2割、火力を3~4割とする。現在の30年度目標は、再生エネを36~38%、原子力を20~22%、火力を41%としていた。ただ、23年度実績では7割の電力を火力に依存している。原発は再稼働が十分に進まず、再生エネは発電量を最大3倍に増やす必要がある。目標達成は容易ではない。
電力需要は、人工知能(AI)の普及などに伴うデータセンターや半導体工場の増加を見込み、最大2割増えると想定する。
原発については再稼働を加速させるほか、次世代革新炉への建て替え方針も盛り込む。廃炉を決めた場合、電力会社が保有する別の原発敷地内での建て替えを認める。現在は廃炉を決めた原発の敷地内に限っている。要件を緩和し、老朽化で廃炉が進んでも原発を一定割合に保つ。原発基数は震災前から増やさない方針。
原発を最大限活用する方針を打ち出すのは、再生エネの拡大だけでは安定供給と発電コストの低減は難しく、産業競争力の低下を招くからだ。ロシアのウクライナ侵略による燃料高騰を教訓に、原発活用で国産の脱炭素電源の確保を図る。
再生エネは、次世代太陽電池などを拡大し、引き続き主力電源とする。火力は、二酸化炭素(CO2)の出ない水素やアンモニアの活用などで脱炭素化を進める。政府は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標を掲げており、40年度の排出量は13年度比で73%削減したい考えだ。
◆エネルギー基本計画=日本が抱えるエネルギー関連の課題やリスクを整理し、中長期的な方針を示す計画。2002年に制定された「エネルギー政策基本法」に基づき、おおむね3年に1回のペースで改定されている。将来の電源構成目標を示すのが特徴で、電力会社など関連業界の経営判断を左右する。