日銀の金融政策決定会合前に考える、2025年に利上げはどこまで進むか?
■ 今後の利上げを占う「中立金利」の現在値 0.75%から先の利上げは、中立金利との比較考量が必要になる。 今年8月に公表されたワーキングペーパー「自然利子率の計測をめぐる近年の動向」では、概して「▲1.0%~+0.5%」が足許の自然利子率イメージとして示された(図表(2))。 インフレ率 2%を前提とすれば、中立金利(≒自然利子率+インフレ率)は「+1.0%~+2.5%」ということになる。現在入手可能な情報に基づき、最も保守的(ハト派的)な中立金利の想定が1%という言い方もできる。 【図表(2)】 この中立金利1%説は、市場ではコンセンサスに近いもののように思われている節もあるが、ここで「本当にインフレ率2%を前提とすべきか」という点を熟慮する必要はある。というのも、仮にインフレ率1.5%ならば中立金利は「+0.5%~+2.0%」、1.0%ならば「+0%~+1.5%」と変動するからだ。 現状のCPI(消費者物価指数)は確かに安定的に2%で推移しているが、これを「円安による一時的な伸び幅」と整理すれば、0%や0.5%が中立金利であるという考え方もある。このような想定に立つと、既に「現状が中立金利」という話になる。 これは弱気過ぎる想定としても、日本のインフレ率が2%弱でアンカーされているとすれば、中立金利が0.75%という考え方はあり得る。
■ 「利上げは0.75%まで」がメインシナリオ ちなみに、日銀が定期的に公表する「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」は既に複数の計数で2%を割り込んでいるため(図表(3))、2%弱というインフレ率は現実的な想定とも言える。 【図表(3)】 まとめると、インフレ率2%を前提とすれば1%までの利上げは辛うじて正当化されるが、それ以下のインフレ率を前提とするのであれば0.75%までの利上げにとどめるという想定にも理はある。 筆者はメインシナリオでは0.75%まで、順当に事態が進んだとしても1.00%が限界と予想する。FRBの「利下げの終わり」が見え、海外環境の追い風もあるのだとすれば、その程度までの利上げは不思議ではないように思う。 では、日銀の利上げが1.00%にとどまらず1.25%や1.50%、果ては2%へ急騰していく可能性はあるのだろうか。 もちろん、日本経済の自然利子率が思ったよりも高く、例えば+0.5%程度までを想定すれば、2.5%程度までの中立金利も正当化される。しかし、そこまでの利上げが行われる場合、「思ったよりも日本経済が強く、自然利子率が高い」という前向きな状況ではなく、より追い込まれた状況ではないか。 2025年の政策金利が1.00%以上でも持続していた場合、それは今よりもさらに通貨防衛色の濃い政策運営に移行した場合である。 これは検討に値するリスクシナリオでもある。