日銀の金融政策決定会合前に考える、2025年に利上げはどこまで進むか?
■ 2025年春の賃上げはどこまで現実的か? 7月を目途に参院選が控えている以上、政治も国民の納得感がある中での利上げを望むだろう。この点、今年と同様に賃上げ動向が要諦になることは言うまでもない。 賃金・物価の好循環を確認することが利上げの何よりのサポート材料になることは、今年3月のマイナス金利解除で確認した通りだ。よって、今回も3月春闘の集中回答日が政策判断の鍵として取りざたされるだろう。 ただ、11月30日の日経新聞による単独インタビュー記事において、植田総裁は「賃金でいえば、25年の春闘がどういうモメンタムになるか。それはみたい。そこは確認にもう少し時間がかかるが、それを待たないと金融政策が判断できないわけではない」と述べ、春闘の結果が見えずとも政策変更に踏み切る可能性を否定していない。 世の中の雰囲気を見る限り、集中回答日を待つまでもなく2025年も2024年並みの強い結果が期待されるため、必ずしも待つ必要はないという判断は腑に落ちる。 日本の企業部門が大きな賃上げを可能にするだけの原資を抱えているとの想定に、大きな無理はない。11月下旬には、2024年4~9月期における上場企業の純利益が4年連続で過去最高となったことが報じられた。順当な賃上げを期待しやすいムードはある。 これはマクロ統計からも確認できる。例えば、輸入コストの影響を除いたホームメイドインフレの指標であるGDPデフレーターは、過去3年で明らかに騰勢を強めている(図表(1))。 【図表(1)】
■ 2025年1~3月までは円高を拾うチャンス ここで実現された値上げ部分は企業部門か家計部門か、いずれかに帰属する。経済分析の観点では、企業部門であれば営業余剰(UP:Unit Profit)として、家計部門であれば単位労働コスト(ULC:Unit Labor Cost)として解釈することになる。 2022年4~6月以降のGDPデフレーターの前期比変化率の累積は約21%ポイントだが、同じ期間のUPの累積は約15%ポイントだった(前ページ図表(1))。すなわち、今回の円安局面の値上げで得られた収益の7割程度が企業部門に分配され、3割程度が家計部門に分配されたということだ。 2023年後半以降、ULCへの分配が漸増する兆しはあるが、値上げ部分の大きさを踏まえると十分という印象もない。2024年の春闘に象徴される賃上げ機運は、「2022年以降の値上げを還元した結果」と整理できなくもない。2025年も、同じような文脈で企業(UP)から家計(ULC)への還元が持続するのではないか。 こうした認識の下、3月や4月に「歴史的な賃上げ幅」が騒がれる中で、日銀による追加利上げという決断があっても全く不思議ではない。 まずは、12月ないし1月に利上げを行い、3月ないし4月に追加利上げというのが現時点のメインシナリオだ。この時点で政策金利は0.75%まで引き上げられる。 筆者は今後1年のドル/円相場見通しに関し、2025年1~3月期までは円高を拾うチャンスがあると考えているが、これは円金利の面からドル/円相場が下押しされる展開を想定しているためだ。逆に、4~6月以降はFRBの「利下げの終わり」が注目されやすくなるため、押し目は徐々に少なくなると予想する。