仕組みも価値観もDIY スニーカーブランド「ヴェジャ」の“優しい”経営をパリで見た!
「ヴェジャ」のリペアサービスをもっと知りたいならここ、と連れられたのが2月にオープンした「ジェネラルストア」だ。サンマルタン運河の走るパリ10区にあり、シューケア用品や靴下、アクセサリーなどを販売しているものの、メイン業務はスニーカーの修理という店舗になっている。木やコンクリート、ガラスを用いてミニマルながら温かみのある空間には、毎日2人のスニーカー職人のほか、クリーニングを手掛けるスタッフが常駐する。「スニーカーを修理できると知らない消費者が多いから、この店はできた」。ストアマネージャーのミカさんはそう語る。
2018年に「ヴェジャ」の勢いが強まり出したころ、「靴の生産量は増えたが、履き終わった後の靴はどうなるのか?」という問題が生じたという。そもそも一般的なスニーカーはレザーやコットン、プラスチックなどのさまざまな素材でできているため、それぞれを単独で分解し、リサイクルすることが難しい。「ヴェジャ」はそこで、リサイクルするよりも前に、リペアすればいいと気づいた。しかし、「スニーカー=履きつぶすもの」という認識が世間に浸透していたため、そもそもスニーカーの修理法が確立されていなかった。
経験者たちと試行錯誤して、革靴の修理技術をスニーカーに適応しながらリペア方法を編み出してきた。現在は、「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」「シャネル(CHANEL)」「エルメス(HERMES)」で経験を積んだ職人が、「ヴェジャ」に転職してスニーカー修理を手掛ける例もあるといい、彼らが未経験の職人志望者にレクチャーする構図もできつつある。ファッション業界の廃棄問題を解決する一端になるため、「ヴェジャ」では他ブランドの修理も受け付けており、職人たちはあらゆる靴に対応できるようトレーニングを積んでいる。「自分の仕事が大好きで、情熱を持っている人ばかりだから、その姿に引かれて職人の門戸をたたく新人もいる」。