仕組みも価値観もDIY スニーカーブランド「ヴェジャ」の“優しい”経営をパリで見た!
実際「ヴェジャ」は、会社に関わる人々に、健康で文化的な生活を提供する仕組みを整えている。例えばブラジルに10人ほどいる現地社員は、「週40時間労働でバカンスも取得可能」と言うし、EC在庫管理のための倉庫「ロギンス(LOG’INS)」を、障がい者支援団体ロギンスとともに運営して、彼らの社会復帰をサポートしている。アレルギーや糖尿病、認知障害、難聴などで就労先を見つけられず、長い離職期間に苦しむ人が、“トランポリンで次のステップに跳ねられるように”、物流やパソコン業務といったスキルを習得できる場になっている。
来年の2月で設立20周年を迎える「ヴェジャ」だが、直営店舗は数世界に計9つと意外にも少ない。コップ共同創業者は、「今の企業体力なら年間100店舗をオープンさせることも可能だが、あえてそうしていない。社員全員が自分らしくいられる場を作るために、時間と哲学を注いでブランドをゆっくりと成長させてきたから、1年に1店舗開くくらいのペースで十分。有名ブランドになるのではなく、普通の人と関わりながら、普通であることを大事にしたい」と話す。
「ヴェジャ」の精神性が表れる出店戦略
ボルドーの店舗が面白い
コップ共同創業者は、「ヴェジャ」は人と環境に優しい存在であることを目指しており、「好きな場所にしか店を出したくない」と出店戦略にもその思いを反映しているという。中でもブランドらしさが表れているのが、フランス・ボルドーの観光スポット「ダーウィン(DARWIN)」にある店舗「ヴェジャ×ダーウィン」だ。
まずは「ダーウィン」について説明したい。環境保護活動家などのアクティビスト4人が共同設立した社会的かつエコロジカルな空間で、9万㎡の広々とした土地には、レストランやショップなどの商業施設があり、来場者は食事やショッピングを楽しめる。面白いのは、高校や診療所、難民やホームレスのためのシェルター、シェルター居住者が自給自足する農場などの非営利施設も軒を連ねている点。不用品を回収するスリフトや、家具や自転車などを修繕する工房も存在し、創業者2人が「ダーウィン」の「さまざまなことを試していこう」という機運に共感したというのも理解できる。