仕組みも価値観もDIY スニーカーブランド「ヴェジャ」の“優しい”経営をパリで見た!
ちなみに、取材時は「ダーウィン」の隣で土地開発工事が行われている真っ最中だった。それを阻止しようとする者がペンキで書いたであろう「違法建築(CHANTIER ILLEGAL)」との大きな文字を発見した。デモなどにあまりなじみのない日本人は、少し面食らうかもしれないほど、ソーシャルアクションの香りがそこかしこに充満していた。
話を「ヴェジャ×ダーウィン」に戻す。その他の店舗と異なり、ここでは最新コレクションを取り扱わない。というのも、リペア(修繕)サービスを導入した初号店だからだ。アーカイブやプロトタイプ、不良品を適宜修繕して割引価格で販売するほか、顧客が持ち込んだスニーカーをリペアするカウンターも設置している。店舗スタッフによれば、「新しいスニーカーを買いに来たお客様が、欲しい商品が見つからなくて結局リペアを選ぶケースもある」。フランス国内のみならず、郵送でヨーロッパ各地から依頼が届くといい、月に70足ほど対応している。パーツの補強やゴムソールの取り替え、クリーニングなどを手掛けており、金額も思った以上に手ごろ。ダメージの度合いによっても価格は変動するが、クリーニングのみで済むケースは1足10ユーロ(1580円)、全体を手直しする必要があるケースでも1足80ユーロ(1万2640円)である。新たに新品が買える値段で、修繕を選ぶ人はまだまだ多数派ではないからこそ、「修繕へのハードルを低くしたいから」と、靴を持ち込めば持ち込むほど1足あたりのリペア費用は安くなるようにしている。環境にも顧客の財布にも優しい仕組みが整っている。
有名ブランドで経験を積んだ職人も
靴は売らない、リペアに特化した店
「サステナビリティ」は、真面目な印象に受け止められやすい中、ファッション関係者からは「『デザインがすてきで購入した商品のブランドが、実はサステナビリティに注力していた』と結果的に明らかになる構図が理想的」という声があがることも少なくない。その点、「ヴェジャ」はデザイン性を武器に支持を拡大してきた成功事例でもある。リペアという観点からも同様のことが言えるだろう。同ブランドではイケてるショップが提供するイケてるサービスとして昇華している。