民主国家としての未熟さが露わに…「韓国の戒厳令」は5カ月前に予言されていた 朴正煕政権のデジャブ
「尹錫悦の暴走」を言い当てた
実は戒厳令を予言していた記事があります。ハンギョレのキル・ユンヒョン論説委員のコラム「韓国の核武装論と朴正煕の10月維新」(7月10日、日本語版)です。結論部分を引用します。 ・最後に言及したいのは、来年以降、尹錫悦政権が暴走する可能性だ。南北和解を主張した朴[正煕]元大統領がわずか数カ月後に選んだ道は、結局「10月維新」(1972年10月17日、朴元大統領が「大統領特別宣言」を発表し、国会の解散や政党・政治集会の中止などを決定したうえ、韓国全土に非常戒厳令を発し、独裁色を強めた一連の宣布)だった。 ・様々な面で窮地に追い込まれた尹大統領も、在韓米軍撤退の論議が本格的に始まれば、安保危機を掲げ、権威主義的統治を強化する可能性がある。独自の核武装論も、与党「国民の力」の政権維持のために乱用されるだろう。 「尹錫悦の暴走」をピタリと言い当てています。時期は「来年以降」ではなく「年内」に早まりましたが。 5か月前にこの記事を読んだ時は、眉に唾したものです。いくらなんでも21世紀の韓国で戒厳令などあり得ない。左派系紙のハンギョレだから「盛って」書いているな、と思ったのです。 この記事が優れているのは、国際情勢から「暴走」を予言した点です。「トランプ再臨で“損切り“される韓国…焦って中国側に走るのか」で書いたように、韓国は孤立し安全保障上の危機に直面しています。
1972年、再び
尹錫悦政権は対北強硬策を採用しました。その北朝鮮はウクライナ戦線への派兵と引き換えに、ロシアに軍事同盟を結んでもらいました。 ロシアは韓国に対し怒り心頭に発しています。米国の圧力でウクライナに大量の155ミリ砲弾を供与したからです。米国経由の形ですが、韓国製砲弾を撃ち込まれるロシアは連日、韓国を威嚇しています。 冷戦時代の再現です。ただ、その時代には米国が後ろ盾になってくれていた。ところが11月5日の選挙で当選し、2025年1月から大統領に返り咲くトランプ(Donald Trump)氏は、韓国との同盟に極めて消極的です。 今回の大統領選挙では「韓国の防衛分担費用を9倍に引き上げさせる」が公約でした。1期目の終わり頃「2期目になったら真っ先にすべての在韓米軍を撤収する」との意向を周辺に漏らしていました。 当時、国防長官だったM・エスパー(Mark Esper)氏が退任後に書いた『A Sacred Oath』の548-549ページで明かしています。 中国との関係はすでに悪化しています。バイデン(Joe Biden)政権によって、対中半導体包囲網に引きずり込まれたからです。次期トランプ政権が対中圧力を増すのは確実です。 来年以降、韓国は「四面楚歌」に陥ります。1972年の朴正煕(パク・チョンヒ)政権の置かれた状況と似ています。当時の韓国は中ソとは国交もなく敵対国のまま。北朝鮮とは南北会談を通じて関係改善を探りましたがうまく行かない。そこに米国が在韓米軍の撤収に動いたのです。 朴正煕大統領は安保危機が政権基盤を揺らすと懸念し、戒厳令による強権政治に乗り出しました。