「変化のペースが上がってきた」--ピュア・ストレージ幹部に聞く、最新技術と日本市場
今秋来日した米Pure StorageのGlobal CTOのAlex McMullan氏は、金融業界で長年働いてきたキャリアを持ち、現在は日本を含むアジア太平洋地域、北米、ヨーロッパの最高技術責任者(CTO)チームを率いる立場だ。グローバルのさまざまな顧客企業を訪問し、最新の技術動向などを伝える立場の同氏に、最新の技術トピックやグローバル視点から見た日本市場の状況などについて聞いた。 今ユーザー企業が気にしていること 顧客企業との対話で現在話題に上るトピックとして、McMullan氏は「AI」「サイバーセキュリティ」を挙げた。両者の組み合わせとして「AIを活用したサイバー攻撃」、AIに関連した話題として「エネルギー密度」に対する関心も高まっているという。 同氏は「世界の主要都市では、既存のデータセンターや電気自動車、そして都市内の建物や家屋全てに十分行き渡るだけのエネルギーが確保できないという問題に直面している」と指摘し、AIクラスターで大量のGPUを集積して演算能力を確保しようとする動きが顕著になってきた中で、GPUの運用を続けるための電力をどう確保するかという問題が生じているとした。 Pure Storageは、オールフラッシュストレージのベンダーとしてハードディスクドライブ(HDD)と比べた場合に圧倒的な電力効率の高さを誇るほか、独自のRaw Flashモジュールによって一般的なソリッドステートドライブ(SSD)よりも高い実装密度と低消費電力を実現したとしている。こうした取り組みは、従来SDGs(持続可能な開発目標)に高い関心を持つ企業から評価されてきたが、現在ではAIに注目して大量のGPUを稼働させたいと考える企業からも関心を集めているという。 「GPUは驚くほどの大電力を消費するシステムであり、平均的なデータセンターが供給可能な電力総量を簡単に超えてしまう。データセンターの最大電力量は設計時点で決まっているため、データセンターで稼働させるGPUを増やしたいなら、何か電源をオフにしたり、消費電力量を削減できるシステムを見つけたりしなくてはならないだろう。多くのユーザーはAIクラスターを可能な限り電力効率の高いものにする過程で従来型のストレージやサーバー、ネットワーク機器の切り離しを進めている。Pure StorageならAIクラスターが必要とする大規模なストレージ容量を極めて高い電力効率で実現できる。われわれの製品では、今や1TB当たりの電力消費が1W以下にまで下がっているためだ」とMcMullan氏は語った。 二酸化炭素(CO2)排出量の削減の取り組みは、このところのAIの急速な進化とGPUのニーズの急増によって状況が複雑化している。 同氏は「最近の報道にもあったように、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleなどがエネルギー源として原子力発電所の確保に動いており、原発再開の動きが加速しつつある。とはいえ、原子力発電所の数も限られており、水力発電に利用できる河川は多くないので、今後データセンターを建て続けるわけにはいかないだろう。さらに、各国政府が電気自動車の普及を推進していたことも状況を複雑にしている。電気自動車など、電力を消費するインフラが増えていることとデータセンター/GPUが消費する膨大な電力量とのバランスをどう取っていくかも課題だ」と指摘した。