【F1分析】マクラーレンはなぜモンツァで勝利を逃したのか? 読みきれなかった路面の改善と”パパイヤ・ルール”
F1イタリアGPを勝利したのは、フェラーリのシャルル・ルクレールだった。ルクレールは1ストップでレースを走り切り、2ストップを選んだマクラーレンのオスカー・ピアストリから逃げ切った。 【リザルト】F1第16戦イタリアGP決勝レース結果 ピアストリとしては、言ってみれば脚を余して敗れた格好。まさに痛恨の敗戦だったと言えよう。 上位4チームの中で、フェラーリ以外の6台は全て2ストップを選択した。それを考えれば、今回のレースでは2ストップがセオリー……マクラーレン陣営としては、いずれフェラーリも2回目のピットストップを行なうだろうと高を括り、ルクレールに首位を明け渡すことになったとしても、ピアストリを先にピットに呼び込むことにした。これが敗戦のきっかけとなったわけだ。
■路面コンディションの改善は予想以上だった?
このグラフは、レース中の先頭からの各車のギャップを示したグラフである。2回目のピットストップを終えたピアストリは、ルクレールの18.538秒後方でコースに復帰した。この時点で残りは14周……つまりピアストリとしては、1周あたり1.3秒程度ずつルクレールよりも速く走らなければ、首位を奪い返すことはできない計算となる。 グラフを見ていただくと、オレンジ色の点線で示したピアストリが、赤の実戦で示したルクレールとの差を一気に縮めているのが見て取れる。しかしそのペース差は十分なモノではなく、結局は最終的に2.6秒差でルクレールが逃げ切ることに成功した。 これについてフェラーリのフレデリック・バスール代表は「ルクレールがハードタイヤで10周走った後、最後まで走り切れるのは明らかだった」と語っている一方、敗れたピアストリは「タイヤの状態からすると、1ストップは非常にリスクの高い判断に見えた」と語っており、ルクレールの勝利は、終わってみれば当然のことだったようにも見える。 しかしピレリのモータースポーツ・ディレクターであるマリオ・イゾラは、こんなことを言っている。 「第2スティントの後、2ストップを選択したドライバーのグレイニングははるかに小さく、これはコースが改善していた兆候だった。それから雲がかかり、気温が変化したことも原因かもしれないし、路面にラバーがついた(タイヤのゴムが付着した)ことも原因だったかもしれない」 イタリアGPの舞台となったモンツァ・サーキットは、今回のグランプリ開催に向けて路面が全面再舗装されたばかり。レースが開催されたのも、再舗装完了後は今回が初めてだった。そのため、路面の改善度合いは大きかった。 またレース中の路面温度が周回を重ねるごとに低下したことも、タイヤを労わる上で好条件となったとみられる。レーススタート時には52度だった路面温度は、30周目には46度、最終周には44度まで下がった。 レース中の各車のラップタイム推移を見ると、それを表していると思えるデータが見て取れる。