内田恭子〈マインドフルネス〉でネガティブ思考はなくならない!? 良い悪いという評価をせず、〈どちらでもない〉があるということを学ぶ
そして、これはネガティブ・ポジティブな思考というものだけではなく、ものの考え方にも使えるテクニックになります。 例えば、私たちはすぐ物事を良いか悪い、そういうふうにジャッジしてしまいがちですよね。 例えば、苦手な食材が出てきたとき、自分が過去にそれをすごくまずいと思ったり、体調が悪いときにそれを食べたことによって、気分が悪くなった経験があったら、その食材をもう食べたいとは思わなくなってしまいますよね。 次にその食材に出会ったときに、私たちの脳はすぐに過去のデータと照らし合わせるのです。そして、自分の経験の中で嫌な思いをしたことがあると自覚すると、それはもう、自分にとって良くないものだという評価を下します。 それは食べ物だけでもなく、物事や人に対しても同じです。この人苦手だな、あの人嫌だなと思ってしまう。それもやっぱり、自分の過去の経験と照らし合わせて、そういうふうに思ってしまうんですね。 でも、その過去の経験、体験、データというものを切り離して、初めてのものを見るように、それを見るようにする。もう一度、それを自分の感覚だけで感じてみると、その嫌だとか苦手という思いから、自分自身を切り離すこともできることがあります。
◆レーズンエクササイズ マインドフルネスに「レーズンエクササイズ」というものがあります。 私たちが普段食べている、あのレーズンを初めて見るものとして捉えて、それを味わってみるというエクササイズです。 それをやると、「レーズンってあまり好きじゃなかったんですが、案外おいしいなと思いました」とか、「レーズンってこんなに豊かな、奥深い味がするんだなと気づきました」という方が、よくいらっしゃいます。 私たちが普段レーズンに抱いているイメージは、例えばクッキーやシリアルに入っているものとか、お酒のおつまみの中にあるもの、などが多いと思います。 つまり、レーズンを主役に考えて、それだけに意識を向けることは、なかなかないのです。 けれども、レーズンと一対一で向き合ってみて、そしてレーズンのイメージから解き放ってそれ自体を見てあげることで、いろいろなレーズンの魅力に気づくことができるようになるのです。 それは、客観的にレーズンを見ることができた、ということでもあります。 だからこそ、自分が嫌だなと思っていたものや人も、その「嫌」という意識から少し切り離して、初めましてのつもりで向き合ってみると、実はいろいろな側面が見えてきて、そのイメージが変わる、という可能性もあるのです。