【解説】「台湾人」が選ぶ未来 総統選挙の情勢は…残り3か月の注目点
来年1月13日の投票日まで残り3か月あまりとなった台湾総統選挙。東アジア、そして世界に大きな影響を及ぼす選挙戦の現状はどうなっているのか。台湾政治研究者で東京外国語大学名誉教授の小笠原欣幸氏に話を聞いた。(聞き手 国際部・坂井英人) ◇◇◇
■総統選挙 主要候補の顔ぶれ
台湾総統選挙が2024年1月13日に実施される。およそ1950万人の台湾の有権者が今後4年間を託すリーダーを自らの手で選ぶことになる。 主要候補は、対米関係を重視し、蔡英文政権の継承を掲げる与党・民進党の頼清徳候補。そして対話を通じた中国との緊張緩和を掲げる最大野党・国民党の侯友宜候補と、二大政党の対立を批判し「中間路線」をアピールする民衆党の柯文哲候補だ。さらに8月にはホンハイ精密工業創業者の郭台銘氏が無所属での立候補表明に踏み切った。 9月22日、長年台湾の政治と選挙を研究してきた小笠原欣幸氏に選挙戦の現状を聞いた。
■リードを続ける民進党・頼清徳氏
Q 選挙戦の現状について教えてください。 「8月以降は民進党の頼清徳氏のリードが固まる展開になっている。ただ台湾の世論調査(民調)は数多くあり、頼氏のリードが大きいものも、それほどでもないものもある。まだ断言するには早いという状況だ」
「台湾民衆党の柯文哲氏と国民党の侯友宜氏が2位、3位を争っていて、世論調査によって順位は入れ替わり、変動がある。頼氏はどの調査でも1位という状況なので、このままゴールするという可能性も高まってきている」
「この主要候補3人に割って入ろうとしている郭台銘氏は支持率があまり伸びていない。社によって違うが、良くても10%、最近だと6%というのも出てきていて、人気が高まる状況ではないという傾向ははっきり出てきている」
■有権者の関心「外交」なら与党に、「内政」なら野党に追い風
Q 頼氏がリードを固めた要因は? 「8月に頼氏が南米パラグアイを訪問し、その前後でアメリカに立ち寄ったことで話題が集中したことが1つ。中国がそれに対する対抗措置として軍事演習を行った。台湾の有権者からすると、アメリカと中国との関係がどうなるのかということを考える契機になった。やはり蔡英文総統が8年やってきた(対米関係を重視する)政策を継承する頼氏がいいのではないかとの認識が広がったのが頼氏の支持があがった要因だと思う」