【解説】「台湾人」が選ぶ未来 総統選挙の情勢は…残り3か月の注目点
「一方、民進党政権が長く続き腐敗や汚職、非効率などといった内政の問題がクローズアップされてきており、政権交代を掲げる野党陣営からするとその訴えが響きやすい。つまり、対中関係という国際情勢に関心が集まると民進党に比較的支持が集まりやすく、内政に関心が集まると野党に支持がいきやすいという状況」
■キャラクターが魅力の柯文哲氏、「失言」と隣り合わせ
医師出身で台北市長も務めた柯文哲氏は、政治家らしくない率直な物言いで特に若年層の男性から人気が高い。 Q 柯文哲氏については? 「振り返れば頼氏がリードを保っていたが、6月、7月は柯文哲氏の人気が高まり、頼氏に迫っていた。柯氏の一番のアピールは『国民党、民進党の二大政党の硬直した対立構造を乗り越えよう』というもの」 前述のように、8月には対外関係に関心が高まり頼氏の支持につながったが、柯氏の支持が伸び悩んだのは他にも理由があるという。 「柯氏がそもそも人気が出ている理由には話の面白さがあるが、それは失言と非常に裏腹の関係で、7月に失言が結構重なり、支持率が下がる傾向にあった。9月になってみると柯氏も気をつけていて、失言は減っている」 台湾メディアによると、柯氏の「失言」にはこんなものがある。柯氏は資金集めの一環で、自身が歌い踊るコンサート「KP SHOW」(KPは柯氏のニックネーム)を開催している。7月に台北市が管轄する「台北流行音楽センター」で開催しようとしたところ「政治活動には使用できない」との規定を理由に許可が下りなかった。 これについて公の場で不満を述べ、「こんなことは皇帝まで計らなくとも、宦官がどうにかできる(通常這種事件,太監就可解決掉,不會到皇上那裡)」と発言した。国民党の蒋万安台北市長を皇帝に、施設側を皇帝に仕える宦官に見立て、蒋市長が妨害したと示唆した発言は「侮辱的だ」と批判され、後に謝罪に追い込まれた。
「(柯氏が2019年に結党した)民衆党は新しく、地方組織もすごく弱い。(総統選挙と同日に行われる)立法委員選挙では選挙区が73あるが、候補を立てられたのは今のところ10選挙区だけ。総統選挙と連動させて勢いを作り出したいがそれもできない。それを考えると柯氏の支持率はもっと下がってもおかしくないが、20%前後で踏みとどまっており、基盤がない割には底堅いというところもある」