ドキドキのJ1残留争いの安全圏はどこか 福田正博「ボーダーラインは勝ち点40獲得」
【開幕前に目指したのは残留ではなかったはず】 川崎フロンターレがこの位置にいるのは、とても残念でならない。2017年から2022年までの6シーズンで優勝4回、2位1回、4位1回と隆盛を誇ったクラブも、昨季は8位で今季も降格圏が見える位置にいる。ただ、彼らが苦戦している原因は、ほかのクラブとは異なる部分もある。それは、先のW杯アジア最終予選に臨んだ日本代表を見れば一目瞭然だろう。 三笘薫(ブライトン)、守田英正(スポルティング)、板倉滉(ボルシアMG)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、旗手怜央(セルティック)、田中碧(リーズ)は、川崎フロンターレから巣立った選手たちだ。現時点で所属している高井幸大を含めれば、川崎出身から総勢7名を日本代表に送り出している。 ただし、これがJリーグの置かれた現実でもある。優れた個を揃えて結果を残しても、やがて選手たちは海外へと活躍の場を求めて巣立ってしまう。すぐれた個が揃うチームほど、彼らが抜けた反動は大きく出る。それがいまの川崎の状況というわけだ。 その状況から立て直すのは容易ではないが、それでも高井のような次代を担う逸材をユースから育てているのは川崎の強みだ。シーズン終盤は来季以降につながるような若手選手の起用が増えるタイミングなだけに、川崎には勝敗だけではなく新たな才能の発芽があるかに注目したい。
【最後までもつれる可能性は高い】 残留争いの本題に戻そう。残留のボーダーラインを勝ち点40にした場合、第30節終了時点(9月18日時点)で勝ち点24の最下位にいるサガン鳥栖、勝ち点25で19位の北海道コンサドーレ札幌にとって、クリアのハードルは相当に高く見える。 鳥栖、札幌ともに勝ち点40に到達するためには、残り8試合で5勝以上を挙げなければならないが、ここに至る30試合で鳥栖は7勝、札幌は6勝しかしていないのだ。ただ、残留の望みがまったくないわけではないだろう。 現在16位の柏レイソルの勝ち点は33、17位の湘南ベルマーレの勝ち点は32。降格圏18位のジュビロ磐田が勝ち点31で続く。この3チームの争いが混戦になれば、札幌と鳥栖にも残留の芽は見えてくる。とはいえ、それでも2勝分以上ある勝ち点のビハインドを跳ね返さなければならないだけに、難しい仕事なのは間違いない。 柏にとっての誤算は、9月14日の磐田との直接対決での敗戦だ。この試合で勝ち点3を逃したことで難しい状況に身を置いてしまった。ただ、FWに細谷真大、MFにマテウス・サヴィオ、右サイドバックに関根大輝と、残留争いの他チームに比べてクオリティーの高い選手がいるだけに、彼らが実力を発揮して、消化試合が1試合少ないというメリットを生かせれば残留は見えてくるはずだ。 その柏を破った磐田に勝ち点1差に迫られた湘南にとっては、毎年のように残留争いを乗り越えてきた経験値がポジティブ要素だ。理想を言えば土壇場での経験はないに越したことはないが、現実的に土俵際に追い込まれて力を発揮できるのは経験則があるチームだ。ここからの残り試合で残留争いを生き抜いてきた湘南の経験値が生きる可能性はある。 この3チームによる直接対決は残されていないため、最後の最後までもつれる可能性は高い。FC町田ゼルビア、サンフレッチェ広島、ヴィッセル神戸による激しい優勝争いの行方とともに、残留シートに滑り込んで最後に笑うのはどのチームか、にも注目だ。
text by Tsugane Ichiro