青い海、白い砂浜、鬱蒼とした松原、そして富士山…浮世絵にも登場する景勝地にそびえ立つ清水灯台へ
スレンダーな清水灯台の中は……?
スレンダーな清水灯台の中は、やはりスレンダーである。はしごのような急な階段を昇り、人一人がやっと通り抜けられるフロアを潜って、ようやっと灯ろう部に辿り着いた。 そこには大きな目玉のような形のレンズがある。 「大きいものなんですね……」 灯台のライトの形など、これまで想像したこともなかった。 「ここで使われているのは五等フレネルレンズといって、サイズとしては小ぶりな方なんです」 それでも高さ541ミリ、レンズとしては十分に大きさを感じる。灯りの種類は、メタルハライドランプというもので、灯してから一分以内はエメラルドグリーンに光り、次第に白くなっていくという。 「薄暮の時、ライトがつく瞬間のエメラルドグリーンを見たいという灯台ファンも多いんですよ。今、やってみましょう」 その場で灯してもらうと、確かに初めは幻想的な緑色。それがじわりと白く変わり、光も強まる。ゆっくりと目を覚ましていく姿にも思え、何とも魅惑的な瞬間である。なるほど、これを見たいと思うのも分かる。 「では、少し、外に出てみましょうか」 深浦さんは、気楽な調子で言う。 「外……って、外ですか」 確かに灯ろう部の外には、人一人が立てそうな幅のテラス部分がある。手すりもついている。が、かなりはしご状の階段を昇って来た。 「高さ、ありますよね」 「そうですね。地上からは15メートルほどでしょうか」 そして、腰ほどの高さの戸を潜って、深浦さんは外に出てしまう。灯ろう部にはもう一人、カメラマンの橋本さんがいたのだが、彼もまた、慣れた様子で外に出る。 よし、ここは行くしかない。 改めてヘルメットの紐を確かめ、スマートフォンのストラップのフックをショルダーバッグに引っかけて、ゆっくりと外に出た。 「風……すごい……」 海から吹く風が、灯台に吹き付けて来る。そして同時に、空からの日差しと、海面に反射する光で、ともかく眩しく感じる。 「ここから、焼津の港にまで光は届くんです」 肉眼では焼津の港ははっきりとは見えないが、以前、海鮮丼を食べに出向いた場所を思い返しながら、なるほど、と、思う。 「こっちを見て下さい」 先に行っている深浦さんの案内で、私は灯台に背を預けたまま、カニのような横歩きで進む。 「おお! これは凄いですね」 そこには浜辺で見た時とはまた違う、連山を従えた富士山が荘厳な姿を見せていた。 目の前に広がる海は、穏やかに凪(な)いでいる。 「ここは、駿河湾の中では海難事故も少ない穏やかなところなんです」 そのため、明治のはじめ頃には灯台建設に「急を要することはない」と言われていたらしい。しかしその後、地元の人々の要請もさることながら、最も大きな理由となったのは、「貿易」であったという。 「ここから海外にお茶を輸出していたんです」 となると、やはり茶畑を見に行きたくなる。