家電のパナソニックがeコマースで「野菜」から「旅」まで売ることになった事情
ただ、試行錯誤を通じて、「手応えを感じている」と芦澤氏は語る。 野菜やパンなどの取り扱いを通じて商品の取り扱いの仕方や物流などのノウハウを取得。2年目の2024年度は、「地元での『旅』に関するテーマにも積極的にチャレンジしていきたい。利用者のネットワークを形成し、『ハックツ!』の今後の成長につなげたい」と芦澤氏は意気込む。 ■地元のキーパーソンが熱意に太鼓判 心強い援軍もいる。地元でインターネット形式の情報マガジン『湘南経済新聞』を配信する三浦悠介・フジマニパブリッシング代表取締役がその一人だ。
三浦さんは藤沢市で2003年にフリーペーパーとして同新聞を創刊。市内のさまざまな事業者や行政関係者と強いつながりを持ち、「ハックツ!」の事業構想や個別企画作りでも親身にアドバイスしている。フジマニパブリッシングはNEKTONブランドのコワーキングスペースも運営し、無償で受け渡しスポットを提供している。 その三浦さんは「ハックツ!」の取り組みを高く評価し、こう語る。 「これまで藤沢市にはいろいろな企業が入り込もうとしてきた。市役所とも連携協定を結ぶなど、さまざまな取り組みが見られたが、その多くは自社の利益の最大化が目的。それに対して『ハックツ!』の関係者は一生懸命地元に密着し、自社の利益を優先せずに、新たな価値を作ろうとしている。この真摯な姿勢には感動すら覚える」
かつて藤沢市にはテレビなどを製造するパナソニックにとって関東初進出となった家電工場があった。しかし工場は2009年に閉鎖され、その跡地は「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(SST)」として住宅地に生まれ変わった。 「ハックツ!」も当初は展開エリアをパナソニックが開発にかかわったFujisawaSSTを中心とし、その周辺を含む市内の限定的なエリアの顧客を対象にスタート。そこでの試行錯誤を元に、2年目の2024年度は市内全域への展開へとステップアップを狙っている。