腰痛の再発予防にウォーキング リスクが30%減少
ウォーキングが腰痛の再発予防に有効なことが、オーストラリアで行われた介入研究(*1)で明らかになりました。1年以上のウォーキングで、生活に影響を与えるレベルの腰痛の再発は30%近く減少し、腰痛による日常生活の障害の程度も軽減していました。 ●腰痛の7割は1年以内に再発する 腰痛は再発しやすく、いったん回復した患者の約7割が1年以内に再発しています。これまでに、腰痛の再発予防には運動と教育の組み合わせが役立つことが報告されていましたが、今回、オーストラリアMacquarie大学のNatasha C Pocovi氏たちが注目したのはウォーキングです。 ウォーキングは、気軽に行える安価な運動の代表で、心臓や血管の健康増進、認知機能の改善、気分の向上などに役立つことがよく知られています。しかし、腰痛の再発予防における効果は明らかではありませんでした。そこで著者らは、原因が特定できない腰痛(非特異的腰痛)を繰り返す患者にウォーキングを1年以上実践してもらい、再発リスクが下がるかどうかを検討する無作為化比較試験を実施しました。 ●運動習慣がなく、再発を繰り返す人たちがウォーキングを実施 対象としたのは、オーストラリアにある民間の理学療法クリニック25施設で、過去6カ月間に非特異的な腰痛が24時間以上持続した後に回復した、18歳以上の成人です。普段から定期的に運動をしていた人などを除外し、条件を満たした701人(平均年齢54歳、女性が81%)を、「ウォーキングプログラムと教育介入を行う群」(介入群:351人)または「何も行わない群」(対照群:350人)のいずれかに無作為に割り付けました。登録された患者は過去に何度も腰痛を経験しており、再発リスクが高いと見なされた人々でした。
介入群には、理学療法士によるセッションを6カ月間に6回行いました。理学療法士は最初に、1人1人の体力や環境、好み、目標に合わせて持続可能なウォーキングプログラムを設計し、徐々に運動量を高めていくよう指導しました。プログラム開始後も継続状況を確認し、必要に応じてプログラムを調整しました。教育は、腰痛関連の恐怖を軽減するために、痛みに関する基本的な科学的知識を提供し、再発リスクを軽減する方法と、軽症の再発を自分で管理する方法について説明しました。 対照群には介入は行われませんでしたが、本人が予防策を実行したり、腰痛再発時に治療を受けたりすることは認めました。 追跡期間は最短で12カ月、最長で36カ月間になりました。介入群が1週目に実施したウォーキング時間の中央値は80分/週で、12週時点では130分/週になっていました。ウォーキングの回数も、週3回から4回に増えていました。 ●介入によって腰痛再発リスクは大きく減少 ウォーキングと教育によって、再発リスクは大きく減少しました。「日常の活動に影響を及ぼすレベルの、24時間以上持続する腰痛」が再発するリスクは、介入群で対照群に比べ28%低下し、最初の再発までの日数の中央値も、対照群は112日だったのに対し、介入群では208日と長くなっていました。介入群では、あらゆる腰痛のリスクも20%低下し、治療が必要な腰痛のリスクも43%低下していました。 介入群では日常生活の障害の度合いも低くなっていました。3カ月ごとに実施した、腰痛による日常生活の障害を患者自身が評価する「RMDQ(Roland Morris Disability Questionnaire)」のスコアは、すべての時点で有意な改善を示していました。 著者らは、「腰痛に関する教育は、患者が痛みに対する恐怖を克服し、運動に取り組むことをサポートし、ウォーキングプログラムは行動に変化をもたらして、互いに再発予防効果を高めた」との考えを示しています。また、今回は最も費用がかからないウォーキングを用いて研究を行いましたが、「他のレクリエーション運動(水泳やサイクリングなど)も同様の利益をもたらす可能性がある」と述べています。 *1 Pocovi NC, et al. Lancet. 2024 Jul 13;404(10448):134-144. (大西淳子=医学ジャーナリスト)