その「もの忘れ」、更年期? or 認知症? 実はほとんどが〇〇です【更年期症状と間違えやすい病気に要注意! ⑫】
HRTはもの忘れには効かないし、認知症の予防効果もない
「もの忘れ」にエストロゲンの影響がないとなると、更年期の症状をやわらげるためのHRT(女性ホルモン補充療法)を行っても改善はしないということだろうか? 「HRTをすることで、ブレインフォグや集中力の低下が改善するケースはありますが、『単なるもの忘れ』には効きません。 また、以前にはHRTを行うと認知症(アルツハイマー型認知症)の予防になるという説がありました。ところが近年、デンマークのコペンハーゲン大学病院のNelsan Pourhadi氏らの研究で、逆にHRTを行った人のほうがアルツハイマー型認知症になるリスクが高い可能性があると報告されました。 この調査結果はHRTを行うとアルツハイマー型認知症になりやすいということを示すものではありませんが、医学会で話題になりました。今後のさらなる研究に注視する必要がありそうです。 HRTはほかのつらい更年期症状の改善や骨粗しょう症の予防など、有意義な点が多いのは確かです。医師と相談のうえ、納得して上手に利用するといいと思います。 最近の認知症の研究では、MCI(軽度認知障害)の段階で適切な予防をすれば認知症に発展せずに、健常の状態に戻る可能性があるといわれています。 もの忘れが気になる場合は、一度、精神科や神経内科を受診すると安心です。特に『もの忘れ外来』や『メモリークリニック』には認知症の専門医がいます。その前に、まずはかかりつけ医に相談してみるのもいいでしょう」
【教えてくれたのは】 小川真里子さん 産婦人科医、医学博士。福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。 イラスト/内藤しなこ 取材・原文/山村浩子