WBC侍ジャパンを待ち受ける米国でのもうひとつの試練
侍ジャパンがチャーター機で決戦の地、米国に到着した。過去4大会で一度もなかった無傷の6連勝で準決勝進出を決めたが、21日(日本時間22日)にロスのドジャースタジアムで行われる試合までの間に、もうひとつの試練が待ち受けている。5日間ある空白期間で、現在の好調を維持できるかどうかの問題だ。 第1回の優勝メンバーで評論家の里崎智也氏も、「調子のよかった選手は、いかにそれを維持するか、逆に悪かった選手は、どう立て直すか、この期間の調整が大切になってくる。僕がアリゾナにいったときは、夜が想像したよりも寒くて戸惑った思い出がある。さらにアリゾナから西海岸のロスへ移動すると、また気候を含めた環境が変わる。このあたりの環境への順応もポイントになると思う」と指摘する。 中田翔(日ハム)が疲れから腰痛を訴えてイスラエル戦の先発を外れたが、2月下旬の合宿から壮行試合、強化試合を経て、1次、2次ラウンドで緊張を強いられる6試合を戦ってきたことで大なり小なり選手は疲労のピークを迎えている。その中で米国へ長いフライトを経て移動。時差があり、日によって変動するという寒暖差や、湿度の違いもあるアリゾナで調整を行わねばならず、特に投手は、屋内のドーム球場から屋外球場に出ることで生まれるWBC球の感触の違いなどにも対応しなければならない。 しかも、今回、日本はアリゾナで2試合の練習試合を組んでいる。厳密に言えば、日本が要望したわけではなく、大会運営側に無理やりに18日(日本時間19日)のカブス戦、19日(日本時間20日)のドジャース戦という2試合を組まされたのである。 前大会の後に出版された「WBC侍ジャパンの死角」(KADOKAWA)は、私が編集した本だが、著者の高代延博・内野守備走塁コーチ(現・阪神ヘッドコーチ)は、この本の中で、アリゾナでの調整についてこんな回想、提言をしていた。少々長いが、まとめて引用する。 「アリゾナでの調整期間が不満で仕方がなかった。百歩譲って暖かいアリゾナで時差調整をするのはいいにしろ強化試合は2試合もいらない。6試合を戦ってきて1次ラウンド後に渡米した前大会とは疲労度が違っていた。時差ぼけ調整どころか、暑さに参ってしまっていた。元気な糸井でさえ泣きを入れ、山本浩二監督も『1試合でええよな』と言っていた。しかも、2試合を消化しなければならないので、歪な選手起用になった。本番で使う投手と、そうでない投手に色分けされたのだ。やらなくてもいい試合をさせられたことによってチーム内のモチベーションに個人差が生まれてしまった」