「70歳を目前」にして「老化」と向き合うことになった筆者が、それでも「悩むことはない」と断言できるワケ
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。 本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。
期待値が問題
現実に対して悩んだり、ムカついたり、失望したりするのは、現実と期待値の関係が原因です。現実が期待値より低いと、人は不愉快になります。逆に現実が期待値を上まわっていれば、人は喜び、得をしたような気分になります。現実が期待値と同レベルだと、人は喜びも悲しみもせずに納得します。 今、期待値に対して、現実が上か下かと考えましたが、現実は変わりません。変えられるのは自分の期待値です。だったら、できるだけ期待値を下げることで、悩んだり、ムカついたりすることを減らせるのではないでしょうか。 また、人は予想外のことが起きたときにも悩みます。こんなことになるとは思わなかった、どうしてこんなことになったのか、同情すべきこともありますが、心の準備が足りないと思われることも少なくありません。 私は今、七十歳手前で、さまざまな老化現象と付き合っていますが、さほど悩むことはありません。これくらいならまだましなほうだと思います。そう思えるのは、年を取ったらもっと身体が弱り、あちこち不具合が出て、厄介な病気になるかもしれず、突然、麻痺が起こるかもしれず、いろいろ不都合が起きる可能性について、できるだけ悪い予測を立てていたからです。 危機管理とは最悪の事態に備えることですから、都合のいい準備だけでは危機管理になりません。最悪のことを考えるのは、不吉だとか、縁起が悪いとか思う人もいるでしょうが、考えたからそうなるわけでもなく、心づもりをするという意味では、思わしくない状況を想定しておくことが有用です。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)