刃物のない、人生なんて。岐阜県関市のPR動画が話題に
野菜にチョップするお母さん、ガムテープでヒゲを抜く中年男性、客の髪を噛みちぎる美容師──。岐阜県関市が制作したPR動画が本日公開され、早くも話題を集めている。動画は同市の地域ブランドである“関の刃物”のPRを目的に制作された作品で、「刃物が存在しない世界」を舞台に奇妙な行動をとる人物が描かれる。市の特産品である“刃物”をPRする動画にも関わらず、ラストまで“刃物”を登場させない展開にした関市の狙いとは?
「刃物の無い世界」が舞台の動画
本日から公開された動画「もしものハナシ」は1分17秒で、生活に欠かせない刃物が無い各シーンで苦心する人々が描かれている。包丁が無いためにチョップで野菜を切ろうとするお母さん、カミソリが無いためにガムテープを使ってヒゲを抜く中年男性、理容用刃物が無いためにお客さんの髪を歯で噛みちぎる美容師と、全体を通して同市の特産品である刃物は一切登場しない。 「刃物が無ければ人はどれだけ困るかを伝えるため、あえて最後まで刃物は出さない構成にしました」と話すのは関市のPR担当者。ラストでは『刃物のない、人生なんて。』という言葉が現われ、何の刃物が無いために登場人物たちが奇想天外の行動をとっていたか分かる展開となっている。
自治体のプロモーションが激化
関市はイギリスのシェーフィールド、ドイツのゾーリンゲンと並ぶ世界有数の刃物工業都市。刃物製品出荷額の全国シェアを見ると、包丁で約5割、理容用刃物で約7割を占めるなど日本の刃物産業の基軸となっていることが分かる。 一方で市が行なった調査によると、関市の特産品が“刃物”であること自体の認知度の低さが挙げられていた。関市の担当者は「こうした状況の打破は市の課題だったようです。今回のPR動画は、特に認知度が低かった20~30代が好む内容に照準を当てました」と話す。 全国的に見ても各都道府県の自治体がここ数年、インパクトやユニークさで興味を引くPR動画の制作に力を入れている。最近では“まつまつまつまつまつけん~♪”の曲にのって、天守閣に扮した松平健が登場する「愛知県の観光PR動画」や、地元の方言とフランス語の語調が似ているのを生かした「宮崎県小林市のプロモーション動画」が話題となったのも記憶に新しい。 本日公開された関市のPR動画は、「日本一の刃物のまち」の認知度拡大を目指して制作されたもの。関市の担当者は「海外の方でも理解できるように、セリフを一切入れていないのもポイントです。『日本一の刃物のまち 関市』を世界にもアピールできれば」と呼び掛けていた。 (編集プロダクション エディマート)