芸術の秋に行きたい、アート&デザインの展覧会10
西川勝人 静寂の響き(千葉)
西川勝人は、ドイツを拠点に40年以上、光と闇、その間にある漠とした陰影に心を配り、作品を制作してきた。抽象的なフォルムをもつ西川の白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造ながら表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえもそっと吸い込んでしまうように、ただ静かにある。 本展は、1980年代より現在まで、一定して静けさという特質を保持し続ける西川作品の美学に触れる日本初の回顧展だ。会場の構成を手掛けたのは、作家自身。彫刻の他、写真、絵画、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物の約70点が登場する。各作品を自然光、外光、照明、間接光と、さまざまな光のもとで展示し、光と作品、空間との関係性を再考している点にも注目したい。 会場となるDIC川村記念美術館の運営母体となるDIC株式会社は、2025年3月下旬に休館することを発表。1月下旬の会期終了までに現地を訪れ、自然が豊かで穏やかな空気が流れる美術館で、「静寂の響き」を肌で感じてほしい。 <写真>西川勝人《根》1994年 作家蔵 ©Katsuhito Nishikawa 2024 会期/~2025年1月26日(日) 会場/DIC川村記念美術館 住所/千葉県佐倉市坂戸631 開館時間/9:30-17:00 ※入館は~16:30まで 休館日/月曜(祝日の場合は開館し、翌平日に休館)、年末年始(12/24~1/1)
ゲルマン・シュテークマイヤー ペインティング/日日 gallery nichinichi(京都)
京都の歴史ある民家をリノベーションしたギャラリー日日で、ドイツ・ミュンヘンに拠点を置く画家、ゲルマン・シュテークマイヤーによる個展を開催。 絵画制作に本格的に取り組む以前、大学では純粋数学と科学哲学を学んだシュテークマイヤーの作品の特徴は、ひとつの作品が数年にわたって描き続けられるということ。始まりを問わず終わりを知らず「ただそこにある」という、作家としての姿勢が作品を通して垣間見える。 シュテークマイヤーの絵画に向き合う際は、「グレー」という色に注目しよう。光や色を反射し、ときに吸収するこの色は、鑑賞者を思考から解放し、無重力空間にいるような感覚へと導く。ぜひこの特別な色を、暮らしの風景を想起させる日日のギャラリー空間の中で味わってほしい。 会期/2024年10月18日(金) ~11月4日(月) 会場/日日 gallery nichinichi 住所/京都市上京区信富町298 開館時間/11:00~18:00 休館日/火曜