ノーベル文学賞作家とBTSをつなぐ消せない歴史
BTSが歌った光州
韓国民主化の象徴的な地域ともいえる光州。しかし、一方でこの地は偏見の対象でもあった。 最近でも韓国の保守ネットユーザーから揶揄されることは珍しくなく、その際、朝鮮半島の7時の方向にあることから、「7時」という隠語が用いられてきた。 「俺に会いたいなら7時に集合 プッシュせよ 062-518」 ネット右翼の揶揄を逆手にとった、この歌詞は、人気K-POPグループアイドルBTSの曲だ。BTSメンバーらの出身地を歌った「Ma city」という曲の中で、光州出身のJ-HOPEのパートとなっている。「062」は光州の地域電話番号、「518」は言うまでもなく、光州民主化運動の日付を指している。 J-HOPEは韓国のニュース番組で、この曲について「伝えたいストーリーを音楽に込めることができるのは、アーティストにとって光栄なこと。忘れてはいけない歴史だと思ったので、音楽で語ってみたいと思った」と語っている。 ネット上の嫌悪の表現をあえて使うことで、518が歴史上の出来事にとどまらず、現在進行形であることを示したのだ。 ハン・ガンのノーベル文学賞受賞は、BTSを始めとするK-POPの世界的な人気、アカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督(ちなみにポン監督もブラックリストの対象だった)などに次ぐ、韓国のソフトパワーの快挙とされている。しかし、根底にある重い現代史が背景にあり、決してそれを無視することはできないのだ。
Forbes JAPAN 編集部