なぜ消えた?スバル「レガシィ」に続いて、トヨタ「スープラ」も生産終了確定…いまこそ問われる自動車メーカーのブランド戦略
● BMWとの協業で復活した トヨタ「スープラ」が6年間で生産中止へ 次に、スープラだ。トヨタの TOYOTA GAZOO Racingが11月28日、スープラ(3.0Lモデル)一部改良ならびに特別仕様車 「スープラ A90 Final Edition」(日欧で限定300台)を発表した。その名の通り、これが5代目である現行スープラの最終モデルとなる。 スープラは、直列6気筒のFR(フロントエンジン・リア駆動)の上級スポーツカーとして、モータースポーツシーンを含めて活躍したトヨタを代表するモデルだ。 時計の針を戻せば、初代は「セリカXX(ダブルエックス)」として78年に登場。当時、筆者は自宅近くのトヨタ販売店で家族と共にセリカXXを試乗したが、クラウンとは別の方向性を持った次世代のトヨタを感じた。 その後、81年に登場した「XX」は、北米でスープラを名乗った。XXという表示が、アメリカでは一般的に良いイメージがないから、と言われていた。 当時、筆者は、スープラ関連パーツを日本で輸入販売する業務に携わったが、各種の純正部品が人気だった。 例えば、デカール(ステッカー)やエンブレム、そして当時はまだ珍しかった電動式の純正ドアミラーやリアハッチに装着する大型のスポイラーが全国各地のXXユーザー向けによく売れたことを思い出す。 3代目になると、より洗練されたボディフォルムとなり、日本でも正式にスープラを名乗った。 さらに4代目では、アグレッシブなモデルとなり、各種モータースポーツでも活躍した。筆者も日米で各種のレーシング仕様に乗っている。だが、排ガスなど法規制の影響もあり02年に生産を終了した。 それから5代目が登場するまで、17年もの歳月がかかった。しかも、BMWとの共同開発で生産は欧州オーストリアという組み合わせだ。実質的には、BMW「Z4」の兄弟車である。 5代目スープラについては、初期開発や発売後の改良などについて、開発責任者と度々意見交換をしている。 トヨタとしては今回、パワートレインのマルチパスウェイ戦略、またGRおよびレクサスの次世代スポーツモデルとの兼ね合いから、スープラの名を再び使用停止としたといえる。 ● ブランド価値の継承と 次世代化に向けた課題 こうして、スバルがレガシィを、またトヨタはスープラを事実上、消滅させたことは単なるモデルラインアップの入れ替えという営業戦略として片付けられるものではないように、筆者は思う。 重要なのは、自動車メーカーがヘリテージ(社歴)を考慮したこれから先のブランド戦略をどう描いているかだ。 自動車産業が100年に一度の大変革期に入ったと言われて久しい。 その中で、電動化や、直近ではソフトウエアを重視したクルマの開発思想であるSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)が自動車産業界での重要課題と位置付けられている。 こうした時代の大波の中で、モデル改編が起こることは十分に理解できる。 ただし、各社のブランドを根底で支えているのは、長年にわたりユーザーに親しまれてきたモデルであり、それらが消滅することは、ブランド全体としていかに影響が大きいかをメーカー各社は今一度、検証するべきだと感じる。経営論における仕分けではなく、ユーザーの立場でいま一度、問い直すべきではないだろうか。
桃田健史