CO2即座に減らす、トヨタ・マツダ・スバルが磨くそれぞれのエンジン技術
トヨタ 国・地域別に最適提供
トヨタはこれまで国や地域のエネルギー事情に応じたパワートレーンを届けるマルチパスウェイの重要性を説いてきた。先陣を切ってきたのが豊田章男会長。EVシフトが過熱した昨今でも方針をぶらさず「敵は炭素」として、多様な駆動装置の選択肢をそろえることが脱炭素につながると説明してきた。 そんな豊田会長は、1月に開催したカスタムカーの展示会で「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた現実的な手段として、エンジンにはまだ役割がある」と発言し、新エンジン開発プロジェクトが始動したことを明らかにしていた。 「なぜ今、再度エンジンをやるのか」―。この疑問に答えるのはトヨタの中嶋裕樹副社長だ。まず世界に10億台以上ある保有車に目を向ける。「EVは価格が高い。これが下がらないと既存の車を乗り続けるしかない。新エンジンではCO2をすぐに低下できる。少しでもCO2を減らす努力を続けることが大事」と話す。 また、EVに搭載する電池は製造時にCO2が大量に発生する。フランスは原子力発電のため、エネルギーに含まれるCO2が少ないが、石炭火力で発電する国では製造に起因するCO2は非常に高くなる。「地域のエネルギー事情によってCO2の排出量は異なる。ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)のほうが、CO2を抑えられる場合が少なくない」と説明する。
マツダ ロータリーエンジン、合成燃料対応
マツダは地域のエネルギー事情に合わせて最適な車両を展開する「マルチソリューション戦略」を構築してきた。CN実現に向け内燃機関と電動化デバイス、CN燃料まで加えた取り組みを推進。「内燃機関の役割を再定義する時が来た」と広瀬一郎取締役専務執行役員兼最高技術責任者(CTO)は語る。 特に独自技術のロータリーエンジン(RE)が軸となる。小型・軽量・高出力で構造上、ガソリンはもちろん、液化石油ガス(LPG)や圧縮天然ガス(CNG)、水素、合成燃料といった多様な燃料への適用性を備えるのが特徴だ。 コンパクトでエンジン補機類を搭載する自由度が高い。電動化デバイスの搭載性にも優れ、革新的なパッケージやデザインが実現できる。課題のエミッション適合性の開発にも注力。毛籠勝弘社長は「REは電動化時代に新たな価値を提供できるユニット」と期待する。 2月にはRE開発グループを再開した。モデルベース開発(MBD)など最新の開発手法と既存のエンジン開発の手法を融合し、開発を加速させる。毛籠社長は「REを社会に広く貢献できる技術として活用することが私たちの使命だ」としている。