考察『光る君へ』41話 敦明親王(阿佐辰美)に猛アプローチする妍子(倉沢杏菜)「邪魔なさらないで」の迫力!新しい時代の到来が迫っている
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。一条帝(塩野瑛久)を亡くした中宮・彰子(見上愛)とまわりの人々の悲しみのかたわら、三条帝(木村達成)の即位が引き起こす変化が描かれた41話「揺らぎ」。 ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載43回(特別編2回を含む)です。
「私は怒ることが嫌いなの」
まひろ(吉高由里子)と賢子(南沙良)の家でなぜ知らない男、双寿丸(伊藤健太郎)が食事しているのかという経緯を乙丸(矢部太郎)が、まひろと乳母・いと(信川清順)らに必死に説明しようとしているが、要領を得ない。乳母・いとは双寿丸を警戒して追い出しに躍起になるが、まひろは楽しそうに笑いあう賢子と双寿丸を見て、出会った頃の三郎(道長)、そして直秀(毎熊克哉)と自分を思い出しているのだろう。 夜具を延べながら、まひろと賢子はかなり打ち解けた様子だ。やはり惟規(のぶのり/高杉真宙)が、母娘ふたりの隔てを打ち消してくれた。 賢子「私は怒ることが嫌いなの」 まひろ「私にはよく怒っていたわよ」 賢子「母上以外には怒っていません」 賢子の実の父・道長(柄本佑)の「俺は怒るのは嫌いなんだ」を思い出して微笑むまひろ。 そして、まひろは気づいただろうか……あれが幼い賢子なりの母への甘え方だったのだと。 少女は成長し、母娘が大人として向き合える時が訪れた。
手ごわい三条帝
一条帝(塩野瑛久)を亡くした中宮・彰子(見上愛)と、遺児・敦成(あつひら)親王(濱田碧生)、仕えるまひろも喪の色を身に着けている。 彰子 見るままに露ぞこぼるるおくれにし心も知らぬ撫子の花 (見るにつけ涙がこぼれる。父帝に先立たれたこともわからぬ程に幼い我が子よ) 「もっと歌を交わしたかった、語り合いたかった、敦成も敦良(あつなが)も抱いてほしかった」 中宮の悲しみ、かしこきあたりの方々の愛しあう姿と悲哀が紫式部の筆に宿り『源氏物語』に厚みを与えてゆくのだろう。 三条帝(木村達成)は、道長の兄・道綱(上地雄輔)、道長の甥・隆家(竜星涼)、道長の息子・教通(のりみち/姫小松柾)を側近に選ぶ。教通は倫子(黒木華)の息子で、道長にとって五男。同じく倫子の子で長男の頼通(渡邊圭祐)は「なぜ私が選ばれなかったのか」と父に不満を漏らす。 道長「帝に取り込まれなかったことをむしろ喜べ。お前が先頭に立つのは東宮様(敦成親王)が帝になられるときだ」 道長は自覚していないようだが、父・兼家(段田安則)が嫡男・道隆(井浦新)を穢れなき存在にするため、次男・道兼(玉置玲央)に汚れ仕事をさせるのだと述べたのと同じく、権力を掌握し続けるために我が子たちを駒として動かすことを当然だと考えるようになっている。 明子(瀧内公美)の息子たち──頼宗(上村海成)と顕信(百瀬朔)のうち、顕信は父・道長に、我々が公卿になるのはいつなのかと熱心に問う。母である明子の、土御門殿の倫子の子らへのライバル心と願望をそのまま浴びて育った息子の姿が哀れで不穏だ。 そして三条帝の御代がスタート。道長を関白にという御言葉だが、道長は断る。 帝は「まことに残念なことである」と言いつつ、その表情は全く残念そうではない、というよりも予想していたような余裕である。そして断るなら朕の願いをひとつ聞けと……。 「娍子(すけこ/朝倉あき)を女御とする」 娍子はこのとき39歳。帝と連れ添って20年である。大納言だった父・藤原済時を16年前に亡くして後ろ盾のない妻を、押しも押されもせぬ権勢を誇る道長の娘・姸子(きよこ/倉沢杏菜)と同じく女御として後宮に住まわせるための計画だと思えば、麗しい夫婦愛に思えるではないか。しかし、それだけだろうか? いずれにせよ新帝は官位と要求をセットで出してくる。昇進を受けても断っても、その先には帝が打った布石が待っている仕掛け。これは道長にとって手ごわいぞ……。
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