社員を幸せにする「MAKE HAPPY 風土活性課」ってどんな部署? パナソニック インダストリーの取り組みに迫る
風土活性化を一過性の取り組みにするわけにはいかない勇気を持って目標数値を掲げ、組織化を実現
――社内複業制度などを活用して活動を広げる際は、経営陣の理解や協力も必要ですね。 プロジェクトの拡大を提案した際には、経営陣から二つの要望がありました。一つは事務局メンバー自身がこの活動を楽しんでハッピーになること。もう一つは活動の成果を数字で示すことです。私自身も、プロジェクトを軌道に乗せていくためには目標が必要だと考えていました。 そんな折に、プロジェクトの一環で慶應義塾大学大学院の前野隆史教授(システムデザイン・マネジメント研究科)をお招きし、オンラインセミナーでの講演を拝聴する機会を得ました。前野教授は幸福の計測や定量化を通じて人間社会システムのデザインを研究されています。講演では組織における幸福の成果として、退職率が51%改善し、創造性が3倍上がり、生産性が1.3倍になるという数字が示されていました。 これは衝撃的なデータだと感じ、私はこの三つをプロジェクトのKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)として取り入れ、「(会社)定着率1.5倍」「創造性3.0倍」「生産性・売り上げ1.3倍」の目標を掲げたのです。 以前から経営陣としてCEO、CFO、CSO、CHROの4名を運営委員として招いており、3,4ヵ月に一度のペースで目標に対する進捗を報告しています。従業員からの要望を伝えて活動方針の承認を受ける場にもなっており、経営陣としても、従業員の本音を的確につかめる機会として価値を感じてくれているようです。 ――「定着率」「創造性」「生産性・売り上げ」は、いずれも風土活性化の目標とするには勇気がいる項目だと感じます。 たしかに覚悟が必要でしたが、それでも目標を掲げなければならないと決意しました。風土活性化は、ともすればふわっとした取り組みになりがちです。仮に経営陣からの要望がなかったとしても、自分たちで何のためにプロジェクトに取り組んでいるのか、その意味を言語化するために目標を掲げていたと思います。 ――2022年、プロジェクトはMAKE HAPPY 風土活性課として正式に組織化されています。この背景には何があったのでしょうか。 プロジェクトの形では、一過性のもので終わってしまうかもしれない危機感がありました。風土活性化は会社にとって永続的なテーマであり、一過性の取り組みにするわけにはいきません。そこで組織化を提案したのです。組織になればポストが生まれ、人員も予算も付きます。仮に私が異動したとしても、組織であれば取り組みが引き継がれると考えました。 とはいえ、ボトムアップで進めているプロジェクトを正式な「課」として認めてもらうのは簡単ではありません。経営陣には自分たちで掲げた目標に対する進捗を伝えるとともに、外部アワード受賞などの成果を示しました。2021年には2019年比150倍となる約30,000人の従業員が活動に参加してくれるようになり、指標としていたデータ・第三者評価・実績によって組織化が認められました。 現在、MAKE HAPPY 風土活性課には私を含む2名の専任メンバーと6名の社内複業メンバーが所属し、任命制による4名の専門職能メンバーとともに12名のメンバーでプロジェクトをリードしています。