社員を幸せにする「MAKE HAPPY 風土活性課」ってどんな部署? パナソニック インダストリーの取り組みに迫る
人事もマネジメント手法を学ぶべき理由フレームワークを活用すれば「手段の目的化」を防げる
――MAKE HAPPYプロジェクトの進化は、村社さんの情熱なくしてはなし得なかったのではないかと感じます。村社さんのモチベーションの源泉は何ですか。 私はもともとディスプレイ技術に関わりたくて、この会社を選びました。エンジニアとしてプラズマディスプレイや液晶ディスプレイの開発に携わっていたのですが、時代の変化とともに、いずれの事業も閉じてしまいました。 事業はいつか終わりを迎えるものなのかもしれませんが、良い終わり方もあれば悪い終わり方もあります。次の一手につながる良い終わり方ができるかどうかは「人」にかかっており、その根っこには「風土活性化」がある。私はそう考えるようになりました。 MAKE HAPPYプロジェクトに関わり始めた頃は私も兼業で、プロジェクトに割いていた時間は10%ほど。力を入れていくうちにその割合が50%となり、あるとき上司から「村社さんは事業企画と風土活性化のどちらをやりたいんですか」と聞かれて、私は即断で「風土活性化に本気で取り組みたい」と答えました。事業企画も良い組織風土があってこそ。私がやってきたこと、これからやりたいことの上位概念として風土活性化が欠かせないと思ったのです。 風土活性化に向けた取り組みには、エンジニア魂が刺激される面もあります。人の心はすぐに変わるし、なかなか測れないもの。さらには経営陣の想いも汲み、数値を可視化してアウトプットしなければいけません。そんな無理難題に挑むことが楽しいんです。結局、私のコアはエンジニアのまま変わっていないのでしょう。 ――村社さんが別の企業で風土活性化に挑むとしたら、どんなことを大切にしますか。ボトムアップの風土活性化に取り組みたいと考えている人へのアドバイスとして伺いたいです。 フレームワークにのっとって進めることを重視します。 MAKE HAPPYプロジェクトでは「チェンジマネジメント」と呼ばれる手法を用いて取り組みを進めています。このフレームワークでは、まずビジョンと戦略を立てます。MAKE HAPPY プロジェクトで最初に言語化したのもビジョンです。次に人的リソースとして、スポンサーやアンバサダーを集めてコミュニティを作ります。私たちでいえば経営陣がスポンサーであり、社内複業で参加してくれるメンバーがアンバサダーですね。その上で全体計画やコミュニケーション方法、KPI、シナリオ、推進施策などを描き、戦略的にプロジェクトを進めていくのです。 昨今、人事領域ではウェルビーイング経営や人的資本経営など、以前よりも高度なテーマに挑むことが求められています。風土活性化もその一つかもしれません。こうしたテーマは世の中のトレンドでもあり、施策を走らせることが先に立って、手段が目的化してしまうことも往々にしてあるのではないでしょうか。しかし戦略不在ではプロジェクトは進みません。人事に携わる方々にとっても、これまで以上にマネジメント手法やフレームワークを学ぶ意義があるのかもしれませんね。 取り組みの推進者としては、自らの想いと会社の文脈をすり合わせることも大切です。私の場合は創業者・松下幸之助の「感謝報恩は真の幸福の根源」という言葉がよりどころとなりました。経営理念や経営ビジョンの中に自分の活動のよりどころを見つけられれば、こんなに心強いことはありません。だからこそ私はMAKE HAPPYプロジェクトに全力投球できていますし、自分自身もハッピーであり続けられるのだと思っています。 ぜひ、みなさん一人ひとりが、自分の手の届く範囲で無理のない程度に、“Happy”になる取り組みを始めてもらいたいです。始めは一人ですが、その想いに共感してくれる仲間が必ず集まってくれます。そうした取り組みが連鎖し、日本の企業が“Happy”になって、日本中の人々が“Happy”となり、そして、今よりもっと“Happy”な世界が実現できたら素敵ですね。