ハリルJが抱える4つの不安
もうひとつの不安はセンターバックだ。所属するFC東京でのプレーに及第点を与えられないとして、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は常連だった30歳のDF森重真人を今シリーズでは選外としている。 ハリルジャパンではほぼ一貫して、吉田麻也(サウサンプトン)と森重がセンターバックを組んできた。翻ってシリア戦では代表通算3戦目の24歳、昌子源(鹿島アントラーズ)が先発。吉田とセンターバックを組むのは、実は初めてだった。 果たして、両チームともに無得点で迎えた後半3分。右CKをショートでつながれ、揺さぶられた末にFWマルドキアンにゴールを許す。マーク役は昌子だったが、DFジェニアトがあげたクロスにジャンプするも届かず、背後にポジションを取られたマルドキアンに頭で叩き込まれた。 集中力を欠いていたのか、チームとして簡単にショートコーナーをさせてしまったこと。揺さぶられている間にマークがずれてしまったこと。ジェニアトとの間合いを詰めたMF倉田秋(ガンバ大阪)の守備も、残念ながら軽いと言わざるを得なかった。 決して昌子だけの責任に帰結される失点ではない。それでも最後の砦を担うポジションゆえに、昨年末のFIFAクラブW杯決勝でレアル・マドリード(スペイン)と真っ向勝負を演じ、延長戦の末に敗れるも株をあげた男は努めて前を向く。 「失点してなんぼ、叩かれてなんぼだと思っているから。失点しておいて何言ってるねん、と思われるかもしれんけど、これでまたちょっと成長できる。時間を巻き戻せるならそうしたいけど、できんもんは仕方ないし、くよくよしとっても先はない。痛い思いを経験して、強くなっていきたい」 ベンチにいるセンターバックの控えは、左サイドバックでの起用が多かった槙野智章(浦和レッズ)と初招集の三浦弦太(ガンバ)だけ。森重を欠く陣容は、世代交代へ向けた指揮官のメッセージでもある。 だからこそ、シリアとの90分間でお互いに把握した特徴を、連携面の熟成に反映させていかなければならない。3月シリーズに続いてキャプテンを務めた吉田も「初めて一緒にやってみて、鹿島ではこんな感じなんだろうな、というのがイメージできた」と収穫をあげてもいる。