子連れ再婚をした妻が「性的行為」を拒む…追い詰められた夫が抱く「大きな疑念」
いったいどうするべきなのか
一方、カイトに友香の発言を伝えたところ、「やっぱり。何となく薄々気付いていました」という受け止めであった。そして、「でも、どうすればいいのでしょうか。愛情がなくても夫婦ってやっていけるのでしょうか。いったい、僕はどうすべきなんでしょうか」と述べ、混乱している様子であった。 何度か別席でやり取りした後、調停人は同席に戻すことを提案し、二人にこう伝えた。 「あまり調停人が積極的に提案するのもどうかと思うのですが、参考程度に聞いてください。お二人は、これまでこの問題について話すことができませんでしたが、ADRをきっかけに少し風穴が開いたように思います。今後、夫婦としてどうするのか、じっくりと話し合われてはどうでしょうか。もちろん、ADRという方法でもいいですし、場合によっては、夫婦カウンセリングや家族療法を受けるという方法もあると思います」 この提案に、二人はほっとしたような表情を見せた。そして、夫婦カウンセリングで対話を継続することに合意し、ADRは一旦終了することとなった。
お互いの気持ちにフォーカスした話し合い
夫婦カウンセリングでは、お互いがどんな夫婦・家族になりたいと思っているか、相手に何を求めたいか、自分は何ができるか、そんなことをテーマにセッションが持たれた。ADRとは異なり、法律事項を扱うことがないため、お互いの気持ちによりフォーカスできた。結果として、カイトは離婚を求め、友香もそれに応じた。カイトは、カウンセリングを通じて、友香の気持ちを理解するとともに、自分の気持ちにも正直になって考えた。その結果、やはり、性的な関係がない夫婦関係は不自然だと感じたのだ。しかし、友香の気持ちも理解することができた。そのため、「利用されている」という誤解は解け、互いに不要に傷付けることなく離婚に至った。 2組目の夫婦のケースは【恋愛や性行為のない結婚をしたはずが…10年目に突然すべてが一変した「夫の一言」】で紹介する。
小泉 道子(家族のためのADRセンター代表、臨床心理士)