開発“周回遅れ”の米ボーイング新型宇宙船、有人試験飛行でISS到着
会見したNASAのジム・フリー副長官は「この数日は興奮した。NASAとボーイング社のチームに感謝とお祝いを伝えたい。宇宙飛行を前進させることは容易ではないが、われわれの国家の価値を高め、科学を通じて人々の暮らしをよりよくする。スターライナーはISSによる利益を最大化するために重要で、将来の深宇宙探査にも知見を与える。引き続き、ISSでの運用と地球帰還を楽しみにしている」と述べた。
スターライナーはアポロ宇宙船のように円錐(えんすい)状の司令船と、円筒形の機械船がつながった構造で、直径約4.6メートル、高さ約5メートル。定員は7人だが、ISS本格運用では4~5人で飛行する。司令船は再使用型で、10回の飛行に耐える。クルードラゴンがアポロ司令船と同様に海上に帰還するのと違い、パラシュートとエアバッグを開いて陸上に帰還するのが特徴だ。
シャトル廃止で独自の有人船を失った米国はその後、運賃を支払ってロシアの「ソユーズ」を利用した。NASAは2014年、有人宇宙船の開発、運用を委ねる契約を、スペースX社とボーイング社との間で、それぞれ26億ドル、42億ドルで締結した。当初は15年にも有人試験飛行を行う計画だったが、開発は大幅に遅延。クルードラゴンは20年5月、有人試験飛行でISSに到達し、同年11月から本格運用が続く。日本人も既に4人が搭乗している。
一方、スターライナーは困難を重ねてきた。2019年12月に無人試験飛行に挑んだが、ロケットから分離後、エンジン噴射のタイミングがずれてISSに到達できないまま地球に帰還した。その後、エンジンの酸化剤と水分の反応によるバルブの固着などで再試験の延期が繰り返され、22年5月にISSに到達している。
その後は有人試験飛行の準備を進めたが、パラシュート機構の強度不足、船内の配線保護テープの可燃性の問題が判明し、先送りに。いったん先月7日に予定されたものの、アトラス5のバルブの異常、スターライナーのヘリウム漏れ、地上コンピューターの電源の問題で延期が繰り返されてきた。