ソ連崩壊後、政党ではなく「TV討論会で大統領を選ぶ」ようになったアメリカ国民
17世紀以降、欧州の国際秩序は変化を続け、ソ連解体後には「アメリカ一極体制」が成立した。このアメリカ体制は、「共和党・民主党」のそれぞれの政党の色を曖昧にし、大統領選挙の結果にも影響をもたらした。現代の政治状況を理解する上で重要な歴史的背景について、書籍『教養としてのアメリカ大統領選挙』から解説する。 【書影】アメリカ大領領選挙にはどんな特徴がある? カリスマ世界史講師が示す「11月の大統領選挙」の読み解き方 ※本稿は、神野正史著『教養としてのアメリカ大統領選挙』(秀和システム)から一部を抜粋・編集したものです。
周回するたびに減っていく指導国
1991年にソ連が解体したことで、1945年以来半世紀近くつづいてきた「米ソ二強時代」は終わりを告げ、「アメリカ合衆国一強時代」という新しい段階に入ります。このことの意味をよく理解するために、時間を400年ほど遡って歴史を俯瞰してみましょう。 17世紀の前半、欧州では全欧を巻き込む大戦争(三十年戦争)が起こり、欧州がたいへん荒廃したことがあります。そこで、欧州中の全権がウェストファリアに結集し、二度とこんなに悲劇が起きないように国際秩序(インターナショナル・オーダー)の構築を話し合い、「ウェストファリア体制」という集団指導体制が生まれました。 しかし、この国際秩序はうまく機能せず、ふたたび大戦争(フランス革命戦争)が起こってしまい、欧州は荒廃、新たな国際秩序を作り直すことになるのですが、このように欧州では17世紀以降、「国際秩序の構築 → 崩壊 → 大戦争 → ふりだしに戻る」という歴史を延々と繰り返して現在に至っています。 ・1周目: ウェストファリア体制 → 崩壊 → フランス革命戦争・ナポレオン戦争 ・2周目:ウィーン体制 → 崩壊 → 第一次世界大戦 ・3周目:ヴェルサイユ体制 → 崩壊 → 第二次世界大戦 ・4周目:ヤルタ体制 → 崩壊 → 現代(ポスト冷戦時代) 1周目のウェストファリア体制は「集団指導体制」ゆえ足並みがそろわず失敗。そこで2周目のウィーン体制では「英・普・墺・露4ヶ国(※1)」に絞って秩序維持に努めましたがこれも失敗。3周目は「米・英・仏3ヶ国」、4周目は「米ソ二巨頭」で国際秩序を守る指導国となっています。 こうしてみると、周回するたびに指導国が「4ヶ国 → 3ヶ国 → 2ヶ国」とひとつずつ減ってきているのがわかります。 そして現在。冷戦時代を越えて「ポスト冷戦」時代は「5周目」と考えることができ、ソ連亡き今、合衆国1ヶ国が「世界の警察」となって国際秩序の維持を務める時代となります。これを「アメリカ体制」と呼ぶことがあります。(※2) [注釈] (※1)ただし、1818年に開催された「エクスラシャペル列国会議」でこれにフランスが加えられたため、以降は5ヶ国となっていますが。 (※2)まだ定着した言葉ではありませんが。