ソ連崩壊後、政党ではなく「TV討論会で大統領を選ぶ」ようになったアメリカ国民
1992年大統領選挙
ところで、ブッシュ父は2期目の大統領選を乗り越えることができませんでした。そもそも、戦後は「同一政党による長期政権を嫌う(※3)」傾向が生まれましたから、すでにレーガン政権から数えて共和党が3期を満了した今回の大統領選はブッシュに分が悪かったこと。そのうえ、彼はTV討論会でポカ(※4)をやらかして支持が急落。 「歴史視点 ⑳」でも申し上げましたが、TV討論会で失態を演じると、これを挽回するにはよほどの外交成果(※5)を挙げるしかありませんが、彼にはその力量もなく。 ちなみに、戦後「2期8年」の任期を満了できなかった大統領は、よほどの障害(暗殺・辞任・無能の3パターン)に阻まれたときのみです。 ① 暗殺:J・F・ケネディ ② 失脚:R・M・ニクソン ③ 無能:G・R・フォード、J・E・カーター そして、ブッシュ父もこの中(③)に名を連ねることになりました(※6)。 [注釈] (※3)戦後は、同一政党が「1期で陥落」することもなければ、「3期以上つづく」こともなくなり、ほとんど「2期8年」ごとに政権政党の交代が起こるようになる。 (※4)外交を力説するブッシュに対して、「大切なのは経済だろうが。そんなこともわからんのか!」とクリントンに吐き棄てられて答えに窮するという失態を演じています。さらに討論会の最中、チラチラと腕時計に目を遣ったことで、「早くこの場を離れたいと思っている」「議論に押されて追い詰められている証拠」と国民に悪印象を抱かせました。 (※5)大統領選挙の結果は過去3年間の実績より最後の1年の成果に大きく左右される。最後の年に大きな成果を挙げれば現職が勝ち、失態を演ずれば負ける。 (※6)先のことまで敷衍すれば、D・J・トランプもここ(③無能)に名を連ねることになります。
前提が変われば法則も変わる
こうして新たに大統領に立ったのが民主党のウィリアム・ジェファーソン・クリントンです。 では、クリントン政権はどのような基本政策を実行していくのでしょうか。 これまでの民主党政権であれば「緊張」時代を牽引してきましたから、彼の基本政策もこれに準ずるのかといえば、じつはそうではありません。なんとなれば「緊張」も何も、そもそもその敵たるソ連がいないためです。 79年にソ連は「アフガン侵攻」をかけましたが、これによりソ連は財政破綻を起こし、侵攻から12年で滅亡してしまいました(※7)。 ソ連という敵がいないのでは「喧嘩(テンション)」も「仲直り(デタント)」もできません。以降、アメリカ合衆国は"敵失"したことで「共和党」と「民主党」という二大政党の成り立ちにすら変質が生まれます。 [注釈] (※7)ちなみに、ソ連の前政権「ロマノフ朝」も1904年に日本に戦争を仕掛け(日露戦争)ていますが、それによりロマノフ朝は財政破綻を起こし、戦争が終わってから12年後に滅亡していますから、まったく同じ過ちを繰り返していることがわかります。そして現在、ロシアはウクライナに戦争を仕掛けたことで財政が急速に悪化してきています。ロシアの未来に待ち受けているのは「12年後の滅亡」か。