大阪万博、500日前にこの状態で本当に開催できるのか(前編)「理念もマネジメント能力もない」という実動部隊 問題続きの背景に三つの構造的要因
大阪万博の開幕まで、11月30日で500日。1年以上あるとはいえ、準備状況は瀬戸際の色が濃くなっている。花形となる海外パビリオンは建設の遅れが明白で、独創的なデザインを諦めて簡素な外観に移行する国が相次ぐ。会場の整備費用は当初の想定から2回目となる引き上げが決まった。その額、最大で2350億円。このうち国と大阪府・大阪市が合わせて3分の2を負担する。つまり大半が税金で賄われるということだ。多くの国民が万博不要論を唱える気持ちはよく分かる。 【写真】350億円「世界一高い日傘」閉幕後に撤去 万博の大屋根「リング」無駄と批判も
一体なぜ、これほど迷走しているのか。さまざまな問題がある中、私たちは実動組織となる「日本国際博覧会協会」、通称万博協会に注目した。この間の動きを見ていると、相次ぐ問題発生の背景として構造的要因が三つ浮かび上がってくる。「顔役不在」「寄せ集め」「公的機関の限界」だ。どういうことか。順番に説明していきたい。(共同通信=2025年大阪・関西万博取材班) ▽「顔」は一体誰なのか 最初に浮かび上がる疑問は「万博協会の『顔』は誰なのか」という点だ。万博のニュースでは岸田文雄首相や自見英子万博相、吉村洋文大阪府知事らが発言している場面が割と多い。ところが3人とも、万博を仕切る協会の会長ではない(吉村氏は副会長)。トップとなる会長は経団連会長で、現在は十倉雅和氏が務める。 顔役が見えづらいことの問題は、万博会場の整備費を巡る一連の経過で端的に表れた。会場となる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)の土台とインフラを整え、催事場をはじめとする施設を建てるための費用だ。2回の見直しを経て、11月上旬には当初想定されていた1250億円の1.9倍となる最大2350億円まで上振れすることが決まった。費用は国と大阪府市、経済界がそれぞれ3分の1ずつ負担する枠組みが維持された。
建設資材の高騰を主な理由とする今回の増額について、万博協会は10月20日、精査した結果をオンラインで国など三者に報告した。説明者は協会事務方トップの石毛博行事務総長。報告を聞く側は大阪府の吉村知事、大阪市の横山英幸市長、関西経済連合会の松本正義会長らだった。ここに十倉会長の姿はなかった。一方、報告を受ける側はいずれも協会の副会長を務めている。 万博協会副会長を兼ねる吉村知事は、協会の事務方幹部を2度府庁に招き、詳細な積算根拠を聞き取った。いずれも記者団に様子を公開した。社会情勢の変化による費用の上昇と、コスト縮減を同時に図っている点を説明させ「負担増やむなし」の雰囲気をつくり上げた。「万博協会の報告を受けた大阪府知事」として、府民らに負担増をおわびしつつ、増額を容認した。自身の職責については「協会副会長で責任者だ」と強調しながらも、府の代表者として協会をただす立場を貫いた。呼び付けられた協会側からはこんな不満が漏れた。