大阪万博、500日前にこの状態で本当に開催できるのか(前編)「理念もマネジメント能力もない」という実動部隊 問題続きの背景に三つの構造的要因
新型コロナウイルス禍が一段落し、大規模再開発が国内で相次ぐ中、閉幕後の解体を前提にしたパビリオン建築は業者にとって魅力に乏しい。2024年には建設現場の残業規制が強化され、人手不足に拍車がかかる。海外の設計であれば言語の壁も生じうる。こうした問題はかねて業界団体側から指摘されてきたが、協会の動きは鈍かった。トラブルが噴き出してから対応する「後手」ばかりが目立つといっても過言ではない。 ここで浮かんできた「寄せ集め所帯」ぶりについて、協会幹部は自らこう分析する。 「職員それぞれのカルチャーが異なり、物事の決め方や考え方が違う。何度か意思統一しようとしてきたがなかなかうまくいかなかった」 大きなプロジェクトについて議論をしてもフォロー体制が機能せず、停滞することもあったという。 見かねた政府は8月末、岸田文雄首相による号令をかけた。「万博の準備は極めて厳しい状況に置かれている。成功に向けて政府の先頭に立って取り組む」。9月からは財務省や経済産業省から幹部を次々に送り込み、新たに「総合戦略室」が設置された。主に部局間の調整やプロジェクトの進行管理を担う。開幕1年半前に至ってようやく「かじ取り役」が固まったという体たらくだ。
▽「公益性を考えれば…」限界あらわ 万博の成否の鍵を握るのは、参加国が独創的なデザインで自ら建てるパビリオンの「タイプA」だ。万博協会は準備遅れの指摘に対し、参加国と建設業者とのマッチングには注力した。各国には国内建設業者のリストを提供し、建設業者向けにもタイプA参加国のリストを作成した。7月には十数カ国がパビリオンの概要を説明する機会を設けて、参加した業者にアピールした。 それでも建設業者からすると、万博に前向きになれない事情がある。大阪のターミナル駅の梅田周辺を含め、国内では複数の大型の再開発事業が進行中だ。今後数十年を見据えた街づくりの醍醐味に比べて、万博の建物の多くは半年間の会期が終われば解体してしまう。大手ゼネコン関係者の言葉がそれを象徴する。「万博工事はうまみがない」 タイプAの建設を目指す60カ国(56施設)のうち、大阪市から建設に必要な許可を得たのは、11月下旬時点で5カ国にとどまる。日本建設業連合会の宮本洋一会長(清水建設会長)は6月時点で、建設が開幕に間に合うかどうかを問われてこう指摘している。「非常に厳しい状況だ」。関係者に繰り返し懸念を伝えていたという。万博協会はもっと踏み込んだ対応を取れなかったのか。