大阪万博、500日前にこの状態で本当に開催できるのか(前編)「理念もマネジメント能力もない」という実動部隊 問題続きの背景に三つの構造的要因
「吉村知事を立てないといけないから仕方ないが、まるでさらし者だ」 ある大阪市議は言う。「知事も市長も協会の副会長であり、事態を把握して議会や府民・市民に伝えるべきだった。役割をはき違えている」 通常の組織であれば責任者が「顔」として認知されるが、協会の会長や副会長の場合、経団連や大阪府など別組織の代表を兼ねており、協会幹部としてメディアに露出する機会は少ない。今年9月からは石毛事務総長が月1回記者会見しているものの、十倉会長が同席する場面は限られる。「万博の運営主体である協会」について、責任を持って統率するべきは誰なのか。国民に分かりづらい状態が続く。 ▽「英知を結集した」という実動部隊 日本国際博覧会協会は2019年1月に発足した。前年11月の博覧会国際事務局(BIE)総会で大阪万博の開催が決定したことを受けてできた、官民合同の組織だ。万博について定義する国際博覧会条約によると、万博は国が主体となって開催することが前提で、万博協会はいわばその実動部隊に当たる。設立趣意書には「万博を成功に導くために、世界から英知を結集し国民を挙げて開催準備に当たる」と記された。
構成は大きく分けて「役員」と「事務方」の2つ。役員は理事会を構成する主なメンバーで、会長は経団連会長が務める。副会長には大阪府の吉村知事や大阪市の横山市長、関経連の松本会長ら13人が名を連ね、学識経験者や企業関係者ら15人も理事に就いている。 一方、万博協会の「本体」ともいえるのが、事務総長をトップとする「事務方」だ。事務総長は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の理事長だった経済産業省出身の石毛博行氏。中央省庁出身者を中心に副事務総長5人が並び、その下に海外パビリオンを所管する「国際局」や会場整備を担当する「整備局」などの部署がある。総勢700人近い大所帯だ。 大所帯にありがちな「寄せ集め」ぶりも、問題続出の構造的要因として浮き彫りとなっている。 ▽「カルチャーも決め方も異なる」 万博を取り巻くさまざまな課題のうち、最初に大きく注目されたのは海外パビリオンの建設だ。150を超える参加国・地域のうち、自前で建設する「タイプA」を当初希望した60カ国(56施設)の準備が大きく遅れていることが明らかになった。