大阪万博、500日前にこの状態で本当に開催できるのか(前編)「理念もマネジメント能力もない」という実動部隊 問題続きの背景に三つの構造的要因
協会は2019年10月、一般社団法人から公益社団法人へと移行した。職員は「みなし公務員」に当たり、公務員と同様の規定が適用される。協会幹部はパビリオン建設との関係をこう説明する。 「公益性を考えれば、マッチングの機会を増やすことしかできない」 有力な事業者を個別にプッシュしたり、事情をよく知る大手ゼネコンに仕切りを任せたりすると、談合やカルテルに当たりかねないからだ。この幹部は言う。「協会の調整不足と批判されるが、では、これ以上何ができると言うのか」。一連の推移を見守ってきた大阪市議はこう嘆息する。 「『公』の機関が大規模事業を開催することの限界を露呈している」 ▽1970年の成功体験 こうした現状には、専門家も苦言を呈する。1970年の大阪万博に詳しい京都大大学院法学研究科の中西寛教授(国際政治学)は指摘する。 「巨大なイベントには、理念とマネジメント能力の両方がないとうまくいかない。2025年大阪・関西万博はその両方がなく、1970年の成功体験と経済効果への期待だけで進んでいる。会場整備費が増えたり、海外パビリオンの建設が遅れたりするという逆風が吹いたことで、その弱点が暴かれた」
中西教授によると、1970年の大阪万博も万博協会の人員は寄せ集めだったものの、出身母体の違う職員をまとめ上げる力を持った幹部がいた。また、日本の経済発展を国内外にアピールするという明確な意義があり、ヨーロッパやアメリカ以外では初めての万博となったことで、欧米中心ではない世界をどう見せるのかという点も当時の関係者はよく議論したという。 共同通信社が11月に実施した世論調査では、万博の開催について「不要だ」が68.6%に達した。「必要だ」は28.3%だった。中西教授は手厳しい。「逆風の中でも、頑張って万博をする意義がどこにあるかが説明されない。『2兆円の経済効果』など抽象的な話しかなく、当事者が無責任に進めていくから国民はしらけている」。その上で「寄せ集め所帯の万博協会にはマネジメント能力がない。みんな一時的な出向だから、他人に嫌がられることを指摘することもないのだろう。だからこそ上に立つ人間がしっかり詳細を詰めながら進めなければいけないが、そうした人がいない」と嘆いた。
しかし万博の工事は進んでいる。これからするべきことはあるだろうか。中西教授は現実的な選択肢として次のようなことを訴えた。 「改めて万博で何を訴えるべきかを関係者で考えるべきだ。それに沿って計画をシンプルにし、それ以外の部分は削ることで予算の圧縮に努める。こうして理屈を付けて削っていけば、国民に納得感を持って万博を受け止めてもらえるだろう」