「加計学園」問題を時系列で振り返る 坂東太郎のよく分かる時事用語
安倍首相が指示した根拠は現時点で存在せず
この問題は詰まるところ、安倍首相が長年の友人である加計理事長の念願であった獣医学部新設のために、「私情で公のプロセスをねじ曲げたのではないか」という疑いに尽きます。なるほど「そうだとしたら疑わしい」文書や発言が見られるのは事実。一方で首相が指示したという明確な証拠は、いまのところ存在しません。 多分に「疑わしい」をオーソライズする役割を担った2018年5月以来の前川喜平前文科省事務次官の発言も、認可の選考過程に携わった文科省の事務方トップの言うことだから信ぴょう性が高いと考える人々がいる半面、既に前職となった者の言い分に過ぎず、かつ文科省はそもそも一貫して獣医学部の新設そのものに消極的であり、いわば規制したい立場を覆された結果なのでバイアスのかかった言動であるとも推測できます。 どこの国でも長期政権に緩みや驕りが生じるのはある意味当然で、行政府の長たる首相に官僚が「忖度」するのも(もししていたとすれば)当たり前といえば当たり前といえます。そうした権力の構図を根底から変えるには、理論上は政権交代が有力な手段の一つになります。ただ政権が担えるのか野党の力量も問われることになります。
--------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など