「加計学園」問題を時系列で振り返る 坂東太郎のよく分かる時事用語
■2016年 諮問会議「広域的に存在しない地域に限り」
《1月》 「広島県・今治市 国家戦略特別区域」の計画が認定され、29日に広島県と今治市が国家戦略特区に指定されました。その1つが「獣医師の養成に係る大学設置事業」で、加計学園が「獣医学部の設置の認可を受けた上で、愛媛県今治市において、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するために獣医学部を新設する」という内容。開設は2018(平成30)年4月とされました。 《3月》 京都産業大学(京産大)が立地する京都府と連携して、国家戦略特区での獣医学部新設提案を行いました。 《9月》 後述する「総理のご意向」「官邸の最高レベル」発言がなされたとされる内閣府と文科省の打ち合わせ(26日)のあった月。2017年6月15日に文科省が「国家戦略特区における獣医学部新設に係る文書に関する追加調査」として公表しました。獣医学部をつくるためには国家戦略特区を担当する内閣府と認可する文科省の協議が必要です。 文科省の追加調査の「資料」のうち「藤原(豊)内閣府審議官との打合せ概要」では、藤原氏が文科省課長などに「平成30(2018)年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。(中略)これは官邸の最高レベルが言っている」と明かし、「『できない』という選択肢はなく事務的にやることを早くやらないと責任をとることになる」とまで念押ししたとしています。 また「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」という文書には、当時の松野博一文科相の発言として、開学時期などに絡んで「『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれています。 《10月》 17日に京都府の農林水産部副部長や京産大の副学長らが国家戦略特区ワーキンググループ(WG)のヒアリングを受けました。獣医学部設置構想を説明します。議事要旨を読む限り、WG委員の反応はおおむね好意的で、獣医学部の新設をはねつける文科省の姿勢に対して批判的という点では、京産大側に同調する姿勢も見られるぐらいです。 《11月》 9日の国家戦略特区諮問会議で、「広域的に獣医師養成大学等の存在しない地域に限り」新設を可能にするために関係制度の改正を行うと決定しました。