“最も長期的で困難な社会課題”の解決に向けて…「高レベル放射性廃棄物の処分」における日本と世界の現状を解説
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。 12月29日(日)の放送テーマは、「考えよう、原子力発電によるゴミの最終処分」。経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 放射性廃棄物対策課長の横手広樹さんから、原子力発電によるゴミの処分、それに伴う国の取り組みについて伺いました。
◆日本に存在する原子力発電によるゴミの数は?
今回は原子力発電をおこなっているすべての国が直面している“原子力発電のゴミ(正式名称:高レベル放射性廃棄物)の問題”について学びます。日本では、原子力発電で使い終えた燃料のうち約95%をリサイクルする方針ですが、残りの約5%は再利用できずにどうしても残ってしまいます。この再利用できずに残ってしまう液体、ガラスに溶かしこんでできたガラス固化体のことを高レベル放射性廃棄物といいます。 高レベル放射性廃棄物の形状は直径約40cm、高さ約1m30cmの円柱で、重さは約500kgあり、すでに国内に存在するガラス固化体の数は約2,500本。また、横手さんは「日本では過去50年以上にわたって原子力発電を利用していますので、各発電所などに貯蔵している使用済燃料をすべてリサイクル処理すると、すでに合計約2万7,000本相当のガラス固化体が日本にあることになります」と補足します。
◆安全性が高く実現可能な「地層処分」とは?
高レベル放射性廃棄物の処分方法は、原子力発電を始める前から「ロケットで宇宙に飛ばす」「海の深いところに捨てる」「南極の氷の下に埋める」など、国際機関や世界各国でさまざまな方法が検討されてきました。今は国際条約で海洋投棄や南極での処分は禁止されていますが、50年以上前は環境保全に対する考え方も今ほど進んでいませんでした。また、宇宙での処分については、いまだ技術的に課題があるため困難です。 そんななか、現時点で最も安全で実現可能な方法として国際社会から認められている処分方法が「地層処分」です。これは、ガラス固化体をさらに分厚い金属製容器や緩衝材で何重にも覆ったうえで、地表から300m以上深い安定した岩盤に埋める方法です。 地層処分は地上で保管するよりも人間の生活環境から隔離できるほか、地震、火山噴火、台風、津波、テロなどの影響を受けづらいと考えられています。また、地下深くは酸素が少ないため、モノが錆びにくく変化しにくい特徴があります。加えて、地下水の流れが非常に遅く、地層内でしっかり閉じ込めることができます。