中村憲剛×山根視来スペシャル対談。アメリカではリーグが選手の給料を払う? メッシ、ロイスらも参入のMLSのお金事情
「Jリーグも見習うべき形」(中村)
山根 運がいいのは間違いないです。チームが勝ってくれているので。フロンターレの時もそうでしたが、調子が悪くてもチームが勝てば、また使おうってなってくれる。アメリカでもそれはあったんじゃないかなと思います。 中村 でも、サイドバックのライバルもいたんだよね? チームの選手層はどうなの? 山根 サイドバックのライバルはいましたね。でもファーストチームは日本みたいに30人とかではなく、フィールドプレーヤーは22人ぐらいと非常に少ないんです。 中村 怪我人が出たらどうするの? 山根 セカンドチームから上げる形ですね。 中村 なるほど、セカンドチームは別で動いているんだ? 山根 そうですね、練習も別で、セカンドチーム用の公式戦も組まれています。 中村 それはJリーグも見習うべき形だね。 山根 海外クラブに所属しているアンダーカテゴリーの選手がトップチームに練習参加などのニュースが流れると思うのですが、こういった理由で参加している場合もあるのかなと。 中村 グラウンドは同じ? 山根 グラウンドはめちゃくちゃ多いんですよ。 中村 確かに土地は広大そうだからな(笑)。 山根 天然芝のコートが6面ほどありますね。そして人工芝1面に、先ほど話したようにスタジアムも。 中村 凄いな。 山根 だから僕らはいつも2面使うんですよ。アップなどのメニューをするほうと、ゲームなどをするほうに分けている。アップはこっちで、戦術練習はこっちとか。 中村 贅沢すぎるな。予算の規模ってどれくらいなの? 山根 どうなんですかね、ただサラリーキャップ制度(総年俸の上限を規制する制度。2023年時点では7.5億円に設定されていたとも)があるので。アメリカのスポーツは全部そうなんですよ。そしてMLSでは選手の給与はリーグが払っているんです(シングルエンティティ制度とも呼ばれ、リーグ側が放映権料など多くの収入を得る代わりに選手の給与を払っている。それとは別に各クラブは“DP選手”として年俸の上限がない選手を3人獲得できる。インテル・マイアミのメッシらがこれに該当し、メッシは年俸約30億円、総人件費では2023年時点でインテル・マイアミが約62億円でトップとの報道も)。 中村 リーグが? 山根 その辺りが面白くて、もし新規参入クラブがあれば、リーグに参入金を払う形になっているんです。 中村 なるほど。 山根 あとは僕らのクラブはAEG(アンシュッツ・エンターテイメント・グループ/世界的なスポーツ・音楽エンターテインメント企業)が親会社なんです。だから設備は充実していますね。ちなみにAEGは今度、名古屋に完成する最新のアリーナ(IGアリーナ)の建設にも関わっています。また、たまにアウェーの対戦相手の練習場でトレーニングさせてもらうこともありますが、設備はどのクラブも綺麗ですね。 ――ロサンゼルス・ギャラクシーには、元ドイツ代表のマルコ・ロイスや、バルセロナ育ちの10番リキ・プッチらも所属していますね。 山根 でもマルコはDP選手ではないんですよ。 中村 お、マルコ・ロイスのことをマルコと言っている!! 絶対、昔のミキだったらロイスって呼んでいるのに。友だちにみたいになってるじゃん!! 山根 あいつ良いやつです(笑)。 中村 マルコ・ロイスのことをあいつって言える日本人は、香川真司かミキくらいだよ。 山根 でもマルコは本当にめちゃくちゃ上手いです。トップレベルってやっぱり凄いですよ。 中村 そりゃそうだよな。ロイスとチームメイトになれるとは...ミキは良い経験を積めているし、良い人生を歩んでいるよ。 山根 楽しいです。それに神戸の選手がイニスタが入団して、すごく良い影響を受けたと言っていましたが、対戦相手からするとあまり分からないじゃないですか。でも、マルコらと一緒にプレーして、確かに学ぶことは多いですね。特に若い選手はそういったトッププレーヤーと早くから接していれば、成長速度が格段に上がると思います。 (第4回に続く) ■プロフィール 中村憲剛 なかむら・けんご/1980年10月31日、東京都生まれ。川崎一筋、バンディエラとしてのキャリアを築き、2020年シーズン限りで現役を引退。その後はフロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー(FRO)、Jリーグ特任理事など様々な角度からサッカー界に関わり、指導現場で多くを学んでいる。 やまね・みき/1993年12月22日生まれ、神奈川県出身。178㌢・72㌔。あざみ野F.C.―東京Vジュニア―東京VJrユースーウィザス高―桐蔭横浜大―湘南―川崎―ロサンゼルス・ギャラクシー。J1通算196試合・14得点。J2通算37試合・0得点。日本代表通算16試合・2得点。粘り強い守備と“なぜそこに?”という絶妙なポジショニングで相手を惑わし、得点も奪う右SB。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)