<リオ五輪>なぜ日本男子マラソンは低迷を続けるのか。東京五輪へ再建策は
ただでさえ、実力が足りない日本勢だが、他国のマラソン選手と違い、「駅伝」というミッションもある。男子の場合は12月初旬に福岡国際、2月下旬に東京、3月初旬にびわ湖と世界大会のマラソン代表選考レースが開催される。そして元日にニューイヤー駅伝だ。現状のスケジュールだと駅伝とマラソンを両立するのは難しい。ニューイヤー駅伝で優勝経験のある選手は、駅伝とマラソンの関係についてこんなことを語っていた。 「チームとしては駅伝の優勝が最大の目標になります。そのため、福岡を走るのは難しい。かといって東京やびわ湖だと、ニューイヤー駅伝のあとに少し休んでからマラソン練習をすると時間が足りません。マラソンでタイムを狙うとしたら、9月のベルリンか10月のシカゴ。あとは4月のロンドンしかないんじゃないでしょうか」 マラソンは42.195kmの勝負だが、ニューイヤー駅伝は最長区間でも22km。当然、トレーニングの中身が変わってくる。そう考えると、駅伝はマラソンの邪魔でしかない。たとえば、世界大会の選考レースを11~1月に固めてしまい、全日本実業団駅伝を3月に開催するかたち(もしくはマラソンを1~3月、駅伝を11月前半にする)にするなど、競技日程を見直す必要があるだろう。 暑さに強く、攻めのレースができる今井正人(トヨタ自動車九州)、マラソンに本格参戦して「成功」の道を模索している佐藤悠基(日清食品グループ)、2月の東京マラソンで外国人勢に食らいついた村山謙太(旭化成)、大学3年時から東京五輪を明確に意識して取り組んでいる服部勇馬(トヨタ自動車)、それから日本長距離界のエースになった大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)。ポテンシャルを考えれば、世界でもおもしろい戦いができる選手たちはいる。 彼らの能力を最大限に発揮できるような“環境づくり”が日本マラソン界にとって急務になるだろう。2020年の東京五輪まで、もう時間はない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)