<リオ五輪>なぜ日本男子マラソンは低迷を続けるのか。東京五輪へ再建策は
アフリカ勢に完敗することが目に見えているなか、なぜ日本勢は高速化への対応が遅れたのか。 ひとことでいうと、「現実を逃避し続けてきた結果」だと筆者は感じている。 現在、日本の実業団チームにはリオ五輪1万mで銀メダルを獲得したポール・タヌイ(九電工)のような世界トップクラスの選手が所属しているが、日本人はトラックや駅伝で、彼らと真剣勝負をしてこなかった。トラックでは早々と勝負をあきらめ、ニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)では「インターナショナル区間」を設けて、外国人選手を締め出している。世界と本気で戦う気持ちがあるなら、国内の大会から強い外国人選手と真っ向勝負すべきだろう。 日本国民に大人気である箱根駅伝の熱狂も、マラソン強化に役立っているとは言い難い。ソウル五輪の5000m・1万m日本代表で、拓殖大で13年間の監督経験もある米重修一も、「単純にレベルは上がりました。でもこの中から1万m26分台ランナーが本当に出るのか心配になりますよね。私は監督時代、突っ込んでブレーキすることは怒らなかったですけど、イーブンペースで行くような選手が大嫌いでした。そんな駅伝をやっていたら世界で勝負できませんから」と箱根ランナーの将来性を危惧している。 日本のマラソンはチームごとの強化が基本スタイルだが、日本陸連も「強化策」を考えて、取り組んでいる。しかし、うまく機能していない。リオ五輪の「メダル」を目標に掲げて、2014年4月に『ナショナルマラソンチーム』(以下NT)を始動したものの、空回りに終わったからだ。 発足時の会見で、酒井勝充・強化副委員長(中長距離・ロード部門統括)は「リオ五輪でメダルおよび上位入賞者を目指すための取り組みです」とNTの目的を話していた。その最大の目玉は、合同合宿で選手の医科学データをとり、「暑さへの適正」を代表選考に生かそうとしていたことだ。当初は、北京世界選手権とリオ五輪は、合同合宿で取得したデータも選考基準になるため、NTに入ることは選考に「優位性」があるという説明だった。しかし、その後、「NTの選手を優先的に選ぶ」という条約が撤廃されるなど、日本陸連のチグハグな強化策に選手や関係者は戸惑っている。