配属ガチャの次は転勤ガチャ?転勤が嫌われる今、採用・転勤・昇進はどうあるべきか (東福まりこ キャリアコンサルタント)
■総合職の「転勤」について再考を
日本企業の転勤制度にはもちろんメリットもある。社員にとって、転勤で仕事の経験値・能力が高まる(先に述べた日経ビジネスの調査で61.1%)・人的ネットワークが高まる(同58.3%)といったポジティブな感想がある。 企業にとっては、人の異動で企業をリフレッシュできるし癒着のリスクも減る。また企業文化を知っている人をすぐに補充できるのは、採用コスト・教育コストがかからずにオペレーションを存続できる良い方法だ。 しかし時代は変わった。共働き世帯が増え、企業は昇進や終身雇用で社員の滅私奉公に報いることができなくなっている。 調査では、転勤要請に意向確認はあるが拒否権がない企業が80.6%と多数を占めていた。希望に添わない転勤・転居をしても望むキャリアでない・会社からの見返りが見合わないと考える人は辞めてしまうし、そもそも転勤制度のある企業は新卒採用や中途採用で選ばれなくなる。 日本企業の取り組みはどうか。 AIG損害保険は2019年から望まない転勤を廃止している。全国転勤可を選んだ社員が希望エリア外に勤務する場合は一律月15万円と住居が必要な場合は家賃手当を最大95%支給する (参照・望まぬ転勤廃止で新卒応募10倍に AIG損保 エリア採用も好調 毎日新聞 2022/09/19)。 明治安田生命保険は単身赴任手当を月額36,000円から50,000円に引き上げ、社宅補助を拡充し転居を伴う異動を対象に最大50万円を支給する制度も新設した (参照・転勤後押し、手当で報いる 明治安田生命やみずほFG 日本経済新聞 2024/04/29)。 みずほ銀行は、社員が家族を伴って転勤する場合、一時金を従来の15万円から30万円にし、単身赴任の場合は8万円から24万円に引き上げた (参照・みずほFGが転勤一時金を増額、単身赴任なら3倍に…人材つなぎ留め狙い 読売新聞オンライン 2023/09/26)。 こうした制度から読み取れる方向性は、社員の望まない転勤をなくし、転居してでもキャリアに必要な経験だと自ら希望した人のみが転勤する。希望者のいないポジションに異動してもらう時は、金銭で報いることで納得できる人が異動する。転勤は、個々人がキャリアやライフイベントを考えて自律的に選ぶという考え方だ。