配属ガチャの次は転勤ガチャ?転勤が嫌われる今、採用・転勤・昇進はどうあるべきか (東福まりこ キャリアコンサルタント)
■転勤は誰のため?
ここで改めて総合職について考えてみると、募集要項において「転勤ありの管理職候補」とあいまいな説明のみがなされている企業が多い。 この転勤とは、(1)社員のキャリアアップ・スキルアップのための転勤なのか、はたまた(2)空いたポジションをうめるため・企業のオペレーション継続のための転勤なのか。 日本企業で働く会社員は複数の部署に異動した結果、専門性が弱いジェネラリストだと言われて久しい。「お仕事は?」と聞かれて先進国の人が「アカウンタントです」「エンジニアです」と職業を答えるのに対し、多くの日本人が「〇〇に勤めています」と勤め先を答えるのは海外で良く知られている。 この現象を考えると、(2)のケースも少なくないのだろう。 社員とその家族など、リスクをとって転勤を受け入れる当人たちにとって、転勤して数年働いた後に市場価値が上がるような(そうでなくても社内で昇進して給与の増加が約束された)異動なのかは重要だ。 果たしてその転勤は、誰のためのものなのか?
■「管理職候補」全員に転勤は必要か?
注意が必要なのが、総合職は「管理職候補」であって「幹部候補」とは言っていない点だ。 多くの日本企業では、幹部(役員)は総合職同士での競争を最後まで勝ち残ったものがなる。 大企業の幹部候補は幅広い分野・地域での経験とリーダーとしての資質が必要だ。しかし、幹部候補が、一般的な管理職候補とスタート時から同じグループに属してゼロからふるいにかけられることには疑問がある。 海外では、幹部候補と管理職候補は明らかに分けて育成されるケースが多い。そのことがよく分かるのが、カルロス・ゴーン氏の経歴だ。 20年以上も前になるが、1999年6月、窮地におちいった日産自動車の再建を託されてカルロス・ゴーン氏が最高執行責任者として日本にやってきた。 ルノーの上席副社長との兼任で当時45歳。上席副社長には42歳で就任しており、創業者でもないのに、この若さでグローバル企業の幹部への抜擢は日本企業・日本人ではまずないだろう。 ゴーン氏のそれまでの経歴を見ると、24歳でミシュランに入社し、27歳でフランス国内のル・ピュイ工場の工場長、30歳で南米ミシュランの最高執行責任者、31歳でブラジルミシュラン社長、35歳で北米ミシュラン社長、ルノーに移り上席副社長になったのが42歳である。 ゴーン氏はフランスの理工系トップであるエコール・ポリテクニークで学んだエリートだ。27歳で工場長に抜擢され、その後もリーダーを歴任しておりエリートコースの典型だと言えるだろう。 このように、海外ではエリート社員に幹部へのFast-track、すなわち近道が用意されていることが少なくない。日本の多くの企業が「大卒の総合職」で一括採用し、東大卒もその他の大卒も同じ給料で同じスタートラインに並び、その後少しずつ昇進に差がつくのとは大きく違う。