消費者の気持ちがよくわかる経済指標「景気ウォッチャー調査」とは?
筆者は「日本の経済指標で、お勧めは何ですか?」と問われたとき、ほとんどのケースで「景気ウォッチャー調査」と答えています。 この指標はコンビニやスーパーの店長、タクシードライバーなど、消費者の近くでビジネスをしている人に景気のアンケートを実施して、それを数値化したもので、内閣府が毎月公表しています。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
最新のトレンドを知る一助になる「景気ウォッチャー調査」とは?
調査が始まった2000年頃は「タクシー運転手に景気を聞いて、何がわかるんだ?!」という批判もあったそうですが、今となっては速報性と正確性を兼ね備えた数少ない優秀な経済指標で、外国人も注目する存在になっています。 また、内閣府のホームページにいけば、直近の数字や簡単な解説のほか、スーパー、コンビニの店長やタクシードライバーなどのコメントも載っていますので、最新のトレンドを知る一助にもなります。地域、業種、項目ごとに、外国人旅行客の行動、車や電化製品の新型モデルの売れ行きなどがまとめられています。 そこで8日発表に発表された、7月景気ウォッチャー調査に目を向けると、景気の現状判断DI(季節調整値)は49.7(6月50.0)、先行き判断DIが50.3(50.5)と共に6月からわずかに低下したものの、4-6月期平均および直近12カ月平均は明確に上回り、夏場の日本経済が順調な滑り出しを遂げたことを示唆しました。
コメントに目を向けると、前向きなものとしては、インバウンド需要やエアコンをはじめ各種夏物の売行き好調を指摘する声があったほか、企業部門を中心にBtoB市場の強さを指摘するコメントがありました。他方、懸念材料としては、人手不足による供給制約、酒税の引き上げによる消費者マインド悪化、ボーナス商戦が期待外れの結果に終わったこと、などが挙げられていました。
このように景気ウォッチャー調査は、日本経済をリアルタイムで測定するうえで優れており、実際、国内総生産(GDP)統計(ここでは最終需要=全体の成長率から在庫寄与度を差し引いたもの)とは密接に連動します。GDP統計は公表が3カ月に一度しかなく、速報性に劣るのですが、景気ウォッチャー調査をみていれば、ある程度、日本経済の成長軌道が把握できるというわけです。